こんにちは。今年も残すところあと20日ほど。はやいものです。
最近、ワイドショーなどで、ある女性の結婚相手が何度も不審な亡くなり方をしているという事件が話題になっていますよね。各種報道によると、その女性は相続目的で結婚したのではないか、とのこと。そして結婚相手の男性は公正証書遺言を作成していたとのことです。
その公正証書遺言の中身の詳細はよくわかりませんが、おそらく、夫が妻に遺産の多くを相続させるというものだったのでしょう。夫婦間でなるべく多くの遺産を相続させるという遺言を作成することは一般的にはよくあることですから、一見すると、何の問題もなさそうですよね。そこがこの事件のポイントなのでしょう。
仮にこれが、結婚していない単なる交際中のカップルだったらどうか、と考えると、様相は違ってきます。
交際中のカップルであっても、交際相手が遺産を得られるようにする手段はあります。たとえば遺言で遺贈をするという方法です。
長年交際したカップルであれば、遺言で遺贈をするというのも自然な感じがします。しかし相続人として遺産を受けとるわけではないので、法定相続人から文句が出るリスクは否めません。
法定相続人が言いそうな文句としては、「気持ちをつなぎとめるために遺贈がなされたのであって、不合理であって認められない。」という反論です。
このような争い(遺言が公序良俗違反で無効か)がなされた事例として、最高裁昭和61年11月20日判決があります。これは遺言で不貞相手に対して遺産の3分の1を遺贈したという事案です。裁判所は、この不倫カップルが周囲において公然の仲になっていたこと、この遺言の作成の前後において二人の仲が特段増したというわけでもないこと、遺贈の割合が遺産の3分の1であって本妻の法定相続人の法定相続分(当時)を侵すものではなかったことなどから、この遺言が不倫な関係の維持継続を目的とするものではなく、もっぱら生計を亡くなった被相続人に頼っていたその不貞相手の生活を保全するためになされたものだ、としてこの遺言は公序良俗違反ではないと判断しました。
結果的に遺言は有効、遺贈も有効ということですが、結婚していれば、この裁判所のような細かい検討をする必要もなく、公序良俗の疑いも生じなくてすむわけです。
やはり、遺言によりある程度遺産の行方を左右できるとしても、結婚しているかどうかというのは大きな分かれ道なのです。