1.はじめに

先日、横浜の山手にある外国人墓地に行ってきました。近くには洋館もあり、異国情緒溢れる雰囲気に癒されて参りました。また、石碑や資料館の説明文を読みながら、近代日本の礎を築いた人たちの当時の想いに思いを巡らせていました。

さて、死者の生前の想いを伝えるツールとしては、遺言書がありますね(ちなみに法律上は、「ゆいごん」書ではなく「いごん」書と呼びます)。この遺言書ですが、原則として大きく分けて、①自筆証書②公正証書③秘密証書の3種類あるのですが、ご存じでしたでしょうか。各々メリット・デメリットがありますので、今回は遺言書の種類についてご説明したいと思います。

2.①自筆証書(民法968条)

(1) 有効要件

 

まず、一般の方にとって一番馴染みのあると思われる遺言書が、自筆証書遺言です。名前の通り、遺言者が手書きで作成する遺言書です。

この自筆証書遺言ですが、法律上その有効要件が厳格に定められています(民法968条)ので、その要件を欠くと無効となってしまいます。その点要注意です。
自筆証書遺言の要件としては、まず、①全文が自筆であることが必要です。相談に来所される方の中には、署名だけ自筆であればよいと考えている方も多いのですが、遺言の中身すべてについて自筆であることが必要ですので、注意してください。

次に、②日付が記入されていることが必要です。特に、年月日が客観的に特定できるように記載しなければなりません。「吉日」等の抽象的記載は不可となります。
もっとも、③氏名については、遺言者が特定できるように記載すればよいです。必ずしも戸籍上の氏名である必要はなく、遺言者が特定できるのであればペンネームを用いることも可

弁護士 森 惇一