みなさん、こんにちは!まだ猛暑が続いていますが、もう9月、夏バテなどしていませんか?
さて、本日は、合意分割と家庭裁判所の裁判手続きとの関係について解説します。
(前回の記事はこちら:離婚時年金分割制度(6))
家庭裁判所の役割
合意分割における家庭裁判所の役割は、請求すべき按分割合を定めるところにあります。しかし、分割の効果を発生させるためには、社会保険庁等に対する年金分割(標準報酬の改定、決定など)の請求手続きが必要になります。
合意分割の手続きは、大きく分けて、
1.分割割合を定める際の基礎となる情報の提供
2.分割割合の決定
3.分割割合に従った保険料納付記録の分割(分割改定処分)
の3つがあります。
合意分割において、当事者間で分割割合の協議ができないときは、当事者の一方の申立てにより、家庭裁判所が定めることになりますが、家庭裁判所が関与するのは、この「2.分割割合の決定」だけです。上記「1.」と「2.」は、社会保険庁の役割です。裁判所で、審判等を得ても、それだけでは、年金分割の効果は発生せず、社会保険庁等に対して年金分割(標準報酬の改定又は決定)の請求を行わなければなりません。
事件の種類別、家庭裁判所の関与
(1) 既に離婚している場合
乙類審判又は調停
分割割合(請求すべき按分割合)を定める処分は、乙類審判事項とされますが、調停の申立てをすることも可能です。調停を申立てた場合に調停が不調になれば審判に移行します。
(2) 離婚前の場合
離婚調停の付随事項として調停をする、離婚訴訟の附帯処分、和解があります。
家庭裁判所への申立ての時間的制限
離婚した日の翌日から起算して2年を経過したときは、原則として、社会保険庁等に対する年金分割の請求をすることが出来ません。財産分与の除斥期間が2年間であることを踏まえてこのように定められました。これは、公法上の制限であり、当事者の合意で左右されません。
家庭裁判所への申立てについては規定がありませんが、原則として、離婚をした日の翌日から起算して2年を経過したことにより、社会保険庁等に対する年金分割の請求が出来なくなると、家庭裁判所への分割割合に関する申立てをすることが出来なくなります。
しかし、例外として2年経過前に、家庭裁判所へ申立てをすれば、事件の係属中に2年が経過しても、その後に分割割合を定める調停をすることが出来ます。この場合、調停成立等の後、1か月以内に、社会保険庁等に対する年金分割割合の請求をする必要があります。
弁護士 石黒麻利子