1 はじめに

 こんにちは、弁護士の平久です。
 今回は、一般的には財産分与の対象とならないと考えられている夫婦の特有財産が、例外的に分与の対象となる場合についてお話しいたします。

2 特有財産について

 特有財産とは、一方の配偶者の所有物といえる財産です。具体的には、婚姻前から一方の配偶者が有する財産や、婚姻後でも相続や親族からの贈与により一方の配偶者が取得した財産です。特有財産は、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産とは言えませんから、原則として離婚する際の財産分与の対象となる財産ではありません。

3 財産分与の対象となる場合

 特有財産であっても、例外的に財産分与の対象となることがあるのでしょうか。特有財産が財産分与の対象とならない理由は、夫婦が協力して築き上げた財産ではないということですから、逆に言えば、他方の配偶者も、その財産の取得、維持、価値の増加に寄与しているということが言えれば、例外的に財産分与の対象とされることがあり得ます。

4 裁判例の紹介(京都地裁判決平成5年12月22日判例時報1511号131頁)

(1)事案の概要

 夫は、会社を経営し、土地、建物を所有していました。妻は、夫の経営するマンション業等の事業会社の経理担当者であり、夫が不動産を取得する際には、金融機関からの融資の保証人になりました。妻が夫の事業を手伝うようになってからは、それまで赤字決算だった会社の業績が、大幅な黒字決算を計上できるまでに改善しました。

(2)裁判所の判断(括弧内は筆者加筆)

 「…別紙物件目録一ないし五記載の土地、建物は、いずれも原告(夫)の特有財産ないし甲原所有の財産と認められ、清算の対象となる夫婦の実質的な共有財産とはいえない。右のような特有財産や第三者に帰属する財産は、夫婦が協力して形成した財産の潜在的持分を清算するという財産分与制度の趣旨に照らし、原則として財産分与の対象とはならないものと解するのが相当である。

 しかし、前示(二)(2)の各事実によれば各財産は被告(妻)の協力によって形成されたものとはいえないとしても、その財産の減少を防止し、その維持に一定限度、寄与したことが認められる。そうすると、右(2)の各事実及びその他の一切の事情を綜合すれば、原告は、被告に対し、金一、五〇〇万円を分与するのが相当というべきである。」

5 おわりに

 婚姻期間中の取得財産ではなかったり、相手方が相続や贈与によって取得した財産であると、財産分与の対象とならないと諦めてしまいがちですが、その財産の価値に対して、実質的にご自身の貢献が認められれば財産分与が認められる可能性もありますので、こうした観点から現在お持ちの財産について検討されてみるのはいかがでしょうか。

弁護士 平久真