皆様、こんにちは。

1 イントロ

 夫婦が別居を開始した際に、お子さん名義の預金通帳をどちらか片方の親が持ち出してしまうことがあります。

 お子さんを監護している親が持ち出したのであればあまり問題にはなりませんが、逆の場合にはお子さんの預金を奪われたということでもめ事になりやすいです。それではお子さんの預金はどのようにとらえるべきでしょうか?

2 財産分与の基本的な考え方

 財産分与は婚姻中に夫婦が形成したとされる財産(「共有財産」といいます。)を分割することを指します。例えば、婚姻中に購入した家財道具等が該当します。また、夫婦間に限っていえば、土地建物といった不動産も夫婦で協力して購入したような場合には片方の単独名義であったとしても、共有財産として扱われ、基本的には2分の1ずつに分け合うことになります。

 しかし、婚姻中には色々な経過を経て得られた財産が混在することがありますので、中身の仕分けが重要となります。例えば、婚姻前に夫婦が互いに持っていた預貯金や、婚姻前後を問わず相続や個人的な贈与によって得られた財産はその人の特有財産に位置づけられ、財産分与の対象から外れます。

3 子の財産の位置づけ

 子の財産は誰のものになるのでしょうか。

 子どもはたとえ未成年者であっても権利能力を持つ自然人である以上、理論的には一人の主体として財産を所有することができます。ただし、現行法上、未成年者の法律行為は親権者の同意が得られなければ原則的には取り消せるという扱いを受けています(民法5条1項本文、2項参照)。

 以上の前提を踏まえると、例えば、実家のおじいさんやおばあさんが子に対してくれたお小遣いやお年玉等は基本的にお子さんのものといえます。もっとも、親権者には子の財産管理権(民法824条)があり、法定代理人として目的の有無は問いませんが処分を許した財産についてのみ未成年者に単独で処分させることができます(民法5条3項前段)。すなわち、子の財産は親権者にその取り扱いが一任されているといっても過言ではありませんが、少なくとも夫婦の共有財産ではありません。

 したがって、お子さん名義の預貯金を財産分与の協議の対象に持ち出すことは原則的にはできないことになります。

 ただし、お子さんの預金口座に入っている預金が一部でも共有財産である場合には、その限りで財産分与の対象にすることはできなくはないでしょう。

 もっとも、お子さんのために貯めてきたと思われるお金を離婚に伴って半分返してと主張した場合、お子さんの目にはどのように映るのか、個人的には気になるところではあります。

 まさに両親の良心に委ねられる、といった案配でしょうか。

 今回もお付き合いいただきありがとうございました。