前回は、離婚が法定の離婚事由があるかないかではなく、お互いが離婚する際の諸条件について合意できるかで決まっていくというお話をしました。その諸条件のうち、慰謝料については触れましたので、今回は、財産分与について説明していきたいと思います。

 財産分与は、清算的・扶養的・慰謝料的側面があると言われています。そして、財産分与の請求には、離婚してから2年間という期間制限があります(民法768条2項)。

 慰謝料的側面があるというのは、財産分与の請求に慰謝料を含めることができることを意味します。

 扶養的性格の財産分与は、慰謝料的財産分与や次に説明する清算的財産分与だけでは、離婚後の配偶者の保護が十分ではない場合に限って、これを認めるのが一般です(東京高判平成10年3月18日)。つまり、扶養的財産分与には補充性があると考えられているのです。

 たしかに、財産分与には、上記各側面もあるのですが、普通みなさんがピンとくるのは清算的側面のはずです。清算的財産分与とは、婚姻期間中、相互扶助的な共同生活を営んでいく中で、形成された財産は、いわば夫婦共有財産であるから、離婚時には二人で山分けしましょうというものです。財産分与と言えば、通常は、この清算的性格として行う財産分与を指すような場合が多いのです。「財産分与」という文言からも、そう受け取るのが自然でしょう。

 清算的財産分与でまず問題となるのは、清算割合ですが、特段の事情のない限り、夫と妻と1/2ずつとするのが実務の大勢です。過去には、財産形成に寄与した割合で決めるとされ、専業主婦の場合、4割程度しかもらえないということもありました。しかし、近時は、女性の地位が上昇し、男女平等の考えが浸透するに至って、専業主婦であっても財産形成に貢献している程度は夫と変わらないと考えられるようになってきたのです。

 次に、清算するのはいつを基準とするのかですが、通説的見解は、別居時としつつ、その後の財産変動を考慮して、妥当な解決を図るべきとします。別居した後は、夫婦といえどもそれぞれ別の場所において自分一人で財産形成をしていくのであるから、夫婦が共同作業で作り上げた財産とは言えなくなってくるとの考えです。理論上は、そのとおりでしょう。

 しかし、他方では、基準時は裁判時(口頭弁論終結時)とする判例もあります(最判34年2月19日)。財産分与が離婚の効果であることからすれば、裁判時を基準とするのも一理あります。また、実際には、別居してからの財産変動を詳細に割り出すことは困難な場合が多く、別居時基準説を貫くには無理があるといえるかもしれません。裁判時基準説の方が、両者の今ある財産を合計して半分すればよいというので簡明かつ実用的です。実務においても、裁判時基準でなされることが多くなっています。

 次に、よく問題となるものとして、財産分与にマイナス財産を含むのかということです。この結論は、何れか一方に決めることはできず、裁判例もわかれています。

 ただし、債務も財産分与に含めて、折半する裁判がなされても、その効果が債権者にまで及ぶわけではないことには注意が必要です。あくまで、当事者間での求償関係に影響を与えるにすぎません。

 また、財産分与には、消極財産つまり債務を含まないと判断がなされた場合どうなるかというと、債務は判断せずそのままということなので、債務の名義人が債務全額の支払義務を負うことを意味します。ですから、夫婦で家を建てて、オーバーローンのまま離婚した場合、たまたま、どちらかの名義でローンを組んでいれば、その名義のある当事者だけが離婚後一人でその債務を返済していかなければならなくなるのです。