こんにちは。長谷川です。
前回に引き続き、外国人との離婚についてお話していきます。
(前回の記事はこちら:外国人との離婚~その2~)
外国人との離婚を考える上で重要な問題点として、「準拠法」の問題があります。
「準拠法」とは、当該事件にどこの国の法律が適用されるのかという問題です。
具体的には「法の適用に関する通則法」が準拠法の適用関係を規定しています。
例えば、日本に住んでいるスイス人同士の夫婦が離婚する場合、準拠法は夫婦の共通本国法であるスイス法になります(通則法27条本文、同25条)。双方とも日本に住んでいるのですから、日本の裁判所で手続きを行う事になりますね。つまり、日本の裁判所が、このスイス人夫婦に、スイス法を解釈/適用して、離婚の可否等を審理するわけです(日本の裁判所が外国法を解釈/適用するって、ちょっと面白いでしょう?)。
では、日本に住んでいるスイス人と日本人の夫婦が離婚する場合は、準拠法はどうなるでしょうか。夫婦の一方が日本に住む日本人である場合、離婚の準拠法は、原則として日本法になります(通則法27条但し書き)。従って、この場合は、管轄裁判所である日本の裁判所が、日本法を解釈/適用して離婚の可否等を審理します。
それでは、日本に住むスイス人とロシア人が離婚する場合、どこの法律を使うことになるのでしょうか。
この場合、夫婦の国籍が違うので、共通本国法はありません。従って、次に検討するのは、住んでいる国が同じかどうかという点です(共通常居所地法といいます。通則法27条本文、同25条)。このケースだと、共に日本に住んでいるのだから、共通常居所地法である日本法を使って、日本の裁判所が、スイス人とロシア人の夫婦の離婚の可否を審理するのです。日本に住んでいるというだけで、スイス人とロシア人が日本の裁判官に、日本の法律で裁かれるって、これもちょっと面白くありませんか。
では、更に、複雑な例を示しましょうか。
スイス人とロシア人のカップルが、スリランカで出会って行動を共にするようになり、2~3ケ国の放浪を経て来日しました。そして約3年8月を日本で過ごした後、カップルでヨットによる世界一周の旅にでました。途中、このカップルは、ヨーロッパやカナリア諸島、南アフリカ、南アメリカ等多数の国を回り、最後には再び日本に戻ってきました。この世界一周の間、カップルはフランスに2年間、ケニアに1年半及び仏領ギニアに1年滞在していました。そして、旅の途中、グアムで正式に婚姻して夫婦となったのです。
すごく面白い話でしょう?これ、実際にあった判例を若干シンプルにアレンジしてます。(実際は、この当事者、更に生い立ち/背景も複雑ですが、ここでは割愛しますね。)
このカップルには、共通本国法もありませんし、放浪していたこともあり日本が常居所であるとも認められませんでした。ただ、当事者の背景や、放浪後には、日本に戻ってきて手続きをしていること、今後は日本で暮らすことを望んでいること等から、夫婦に密接に関連する地の法律ということで日本法が適用されました。(正直、何で日本法?って感じもするんですが、まあ、日本の裁判所ですから、よく分からない外国法よりも、勝手知ったる日本法を準拠法としたいのは人情でしょうね。)
今日のお話は、あくまでも夫婦間の離婚についての準拠法の話でしたが、親権や面接交渉など親子関係については、通則法32条が定めているので、離婚の準拠法は日本法だけど、子どもの親権者指定の準拠法はイギリス法になるなんていう場合もありうるのです(複雑・・・)。
その辺は、また次回お話しますね。
弁護士 長谷川桃