こんにちは。長谷川です。
 前回に引き続き、外国人との離婚についてお話していきます。
 (前回の記事はこちら:外国人との離婚~その1~

 外国人との離婚を考える上で重要な問題点として、「送達」の問題があります。

 「送達」とは、訴状や証拠書類等、提訴時に裁判所に提出した書類を相手方に公的に送付し、裁判の開始を知らしめることです。日本人同士であれ、外国人同士であれ、或いは日本人と外国人のカップルであれ、当事者双方が日本に居住していれば、送達先は日本国内の住所地です。従って、裁判所に訴状等の書類を提出すれば、裁判所が、相手方の居住先に送付して送達してくれます(具体的には、郵便事業株式会社によって送付されるわけです)。

 これは、簡単です。かかる時間はせいぜい3~4日程度で、原則的には相手方にきちんと送達されます。仮に相手方が受領を拒否したり、所在不明ということで戻ってきてしまっても、次のステップに進むことができます。

 しかし相手方が外国にいる場合、特に、配偶者が外国人である場合は、母国である海外に居住していることも多いです。

 そうすると、日本で離婚訴訟を提起して送達を行うには、非常に時間がかかります。

 海外送達には、いくつかのルートがありますが、原則としては領事送達で行います(少なくとも私は領事送達の方法以外で送達が行われた案件を取り扱ったことはありません)。

 領事送達とは、家庭裁判所から、最高裁まで送達書類があがり、そこから外務省を経由して、在外(在送達国)日本大使館等から相手方住所地へ送達を行う手続きです。

 この場合、送達先の国がどこであるかにもよりますが、送達期間だけで平均的には、4~5ヶ月かかります(国によってはもっとかかることがあります。バングラデシュのように送達だけで12ヶ月かかるとされている国もありますし、更には「先例無し」でどれだけ時間がかかるのか分からないという国すらあります)。

 送達後1ヶ月程度の準備期間をおいた上で初回期日が設定されることが普通ですので、どんなに早く送達手続きが進んでも、これだけで初回期日は半年先になってしまいますよね。

 更に、海外送達においては、訴状や提出証拠の訳文を準備しなければなりませんので、その準備にも1ヶ月程度かかります。

 しかも上記の期間はあくまでも平均的な期間なので、実際にはもっと長くかかる場合もありえます。そのため、裁判所も念の為ということで1ヶ月程度多めに期間をおいて初回期日を設定することが多いです。

 そうなると初回期日は提訴から8ヶ月以上先ということになってしまうわけです。

 ・・・。ここまでで、まず、「長い・・・」と思いますよね。でもこれだけではありません。

 無事に初回期日を迎えたところ、海外にいる相手方は、日本の裁判に応訴せず出頭もしなかったとします。そうすると離婚訴訟の場合、期日自体は2回程(2ヶ月程度)で終わることになり、原告である依頼者の勝訴という結論になる可能性が高くなります。ただ勝訴判決を得ても、その後、判決の送達手続きにも上記と同じだけの期間が再度かかるわけです。

 今回はあくまでも判決の送達なので、準備期間の1ヶ月はおかなくてもよいものの、判決の訳文は必要ですし、送達自体にかかる時間も同じです。

 判決の確定は、送達後2週間経過してからですから、仮に判決で離婚を勝ち取ったとしても、戸籍に離婚を届け出ることができるのは、早くとも判決が出てから7ヶ月近く先ということになってしまいます。

 そうすると順調に進んだとしても、訴訟提起から、離婚届提出まで16ヶ月もかかることになってしまうのです!
 とにかく長いですよね。

 しかも上記はあくまでも平均的送達期間を基準に、全て順調に進んだ場合だけを想定しています。実際には、裁判所(特に地方の裁判所)では、海外送達案件がそれほど多くないこともあり、裁判所の書記官も海外送達事務を調査しながら進行させるということが少なくありません。そうすると提訴から確定まで何年もかかってしまうこともあります。

 私が実際にやった案件でペルー共和国にいる被告に海外送達し、第1回期日で終結してその後判決が下され、送達・確定するまで、実に3年もかかった事案があります。裁判所書記官の使うマニュアルでは、ペルー共和国への送達は5ヶ月が平均的期間とされていますが、現実はマニュアル通りにいかず、何だかんだと結局3年もかかってしまったのです。

 従って、外国にいる配偶者相手に日本の裁判所で裁判手続きを行う場合、送達については、非常に時間がかかることを覚悟していただかなければなりません。

 ただ、この点を覚悟していただけるのであれば、外国にいる配偶者相手に離婚裁判を行うことも決して不可能ではありません。

 なので、海外にいる相手方に対して、どうしても日本で裁判手続きを行いたいというご希望がある場合には、是非1度弁護士に尋ねてみて下さい。

弁護士 長谷川桃