前回、「離婚時年金分割制度(3)」で、離婚時年金分割制度のポイントについて説明しましたね。そこで、今回は、厚生労働省平成19年1月発表のモデル年金額を使って年金給付額を試算してみたいと思います。

 夫が月額平均36万円で40年間就業し、妻がその全期間専業主婦であった世帯の給付水準(世帯合計23万2600円)をモデルに年金分割制度の効果を説明します。

[モデル年金額]
老齢厚生年金         老齢基礎年金(満額)   合計(月額)
夫  約10万0600円   約6万6000円   約16万6600円
妻         0円   約6万6000円    約6万6000円

 モデルの夫婦が離婚した場合、離婚時年金分割制度を利用しなければ、夫は、約16万6600円の年金を受け取ることができますが、妻は、約6万6000円しか受け取ることができません。

 仮に、夫の稼働期間が40年で婚姻期間も40年だった場合、この夫婦が、年金分割割合を0.5で合意したとすると、夫の厚生年金約10万0600円の半額である月額5万0300円が夫の給付額から減少し、その分、妻の給付額が増加することになります。

 仮に、夫の稼働期間40年のうち、婚姻期間が10年だった場合には、夫の厚生年金約10万0600円の4分の1である2万5150円の半額、1万2575円が夫の給付額から減少し、その分、妻の給付額が増加することになります。

 以上は、あくまでも、みなさんに年金分割のイメージを持って頂くための「モデル年金額」であって、実際の給付額とは必ずしも一致しない点に留意してください。

 次に、年金分割制度の種類について説明します。離婚時年金分割制度には、合意分割と3号分割の2種類があります。

1.合意分割(平成19年4月1日施行)

(1)上記施行日以降の離婚に適用される。 (2)当時者の合意又は家庭裁判所の審判等により分割割合(請求すべき按分割合)を定める。 (3)対象期間は、施行日の前後を通じた婚姻期間の全体

2.3号分割(平成20年4月1日施行):被扶養配偶者である期間についての年金分割にかかる特例

(1)上記施行日以降の離婚に適用される。 (2)分割割合は、法律上当然に2分の1(分割割合の合意や裁判は不要) (3)第3号被保険者期間のうち、施行日以降の部分だけが対象期間となり、施行日より前の期間は、3号分割の対象にならない。

 なお、3号分割制度の対象とならない婚姻期間中の厚生年金については、合意分割制度の条件に該当する場合、合意分割制度に基づいて分割することができます。

弁護士 石黒麻利子