こんにちは!「離婚時年金分割制度」の第3回は、離婚時年金分割制度のポイントについて解説します。

 離婚時年金分割制度とは、夫婦の一方又は双方が被用者年金(厚生年金又は共済年金)のいずれかに現に加入し、又は加入したことがある場合に、その夫婦が離婚をしたとき、その年金を分割する制度です。

 夫が厚生年金に、妻が共済年金に加入しているといった同一の当事者間で、年金の種別が複数ある場合は、当事者の判断で、両方の年金を分割の対象とすることも、いずれか一方の年金のみを分割の対象とすることもできます。

 又、各年金の分割割合を変えることも可能です。

 年金分割は、年金の支給開始前(受給権が発生する前)でも行えます。

 分割の方法は、被用者年金の年金額の算定基礎となる保険料納付実績(保険料納付記録)のうち、婚姻期間中の部分を分割します。

 分割の方法のポイントは、次の2点です。

1 保険料納付記録を分割します。
 保険料納付記録とは、年金額の算定の基礎となるもので、それまでに払ってきた保険料の納付実績といえます。

2 分割対象は、保険料納付記録のうち、婚姻期間中の部分です。

 たとえば、専業主婦だった女性が、離婚時年金分割をする場合を考えてみましょう。婚姻期間中の夫の保険料納付記録のうち分割された夫側は、年金額の算定の基礎となる婚姻期間中の保険料納付記録が減るため、年金額も減ることになります。これに対し、分割を受けた妻は、婚姻期間中の保険料納付記録が増えるため、年金額が増えることになります。

 このように、分割の結果、夫は分割された分を除いた納付記録をもとに算定した年金の額を受給し、妻は、分割された分を含めた納付記録をもとに算定した年金の額を受給することになります。

 保険料納付記録のうち、婚姻期間中の部分を分割するため、分割を受ける者には自己の年金受給資格に応じた年金受給権が発生します。当事者の一方に生じた年金額を分割するのと違って、分割を受ける者には、その人に固有の年金受給権が発生するので、一旦発生した年金受給権は、分割した者が死亡しても失われません。

 妻は、自分の年金受給開始年齢に達しないと支給を受けることができませんし、夫は、妻への支給が開始していなくても、分割された部分を除いた納付記録をもとに算定した年金額を受給することになります。

 なお、老齢厚生年金の受給資格は、国民年金の老齢基礎年金の受給資格(保険料納付済み期間、保険料免除期間等の合計が25年以上)があることと、原則65歳以上であることです。

弁護士 石黒麻利子