こんにちは。長谷川です。
 今日は、趣きを変えて、外国人との離婚について、何回かに分けてお話してみようと思います。

 外国人と婚姻し離婚を考えるようになった場合、日本人同士の離婚の場合には検討しない問題点で、必ずチェックしなければならないものがいくつかあります。

 今日は、そのうちの1つ目、管轄国がどこかという問題について説明したいと思います。

 例えば、アメリカ人男性と日本人女性が婚姻して子どもをもうけ、アメリカで暮らしていたと仮定しましょう。その後、離婚問題が発生し、日本人妻は、子どもを連れて日本へ帰国。

 この場合、日本人妻は、日本の裁判所で離婚手続きができるのかという問題です(厳密にいうと、日本人同士であっても、夫婦が外国で暮らしていて、その後、夫婦の一方が日本に帰国してしまった場合には、同じ問題が発生しますね。)

 結論を先に言うと、この設例だと、原則は、アメリカで手続きをすることになります。

 ただ、最高裁昭和39年3月25日判決によれば、国際離婚の裁判管轄は被告の住所地を原則としながらも、例外的に原告が遺棄された場合、被告が行方不明の場合、その他これに準ずる場合には、原告の住所地国の管轄も認めるとしており、更に、最高裁平成8年6月24日判決によれば、離婚請求訴訟において、「被告が我が国に住所を有しない場合であっても、原告の住所その他の要素から離婚請求と我が国との関連性が認められ、我が国の管轄を肯定すべき場合があり、どのような場合に我が国の管轄を肯定すべきかについては、当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理に従って決定するのが相当である」と述べています。

 更に、上記決定に際しては、応訴を余儀なくされる被告の不利益の他「原告が被告の住所地国に離婚請求訴訟を提起することにつき法律上又は事実上の障害があるかどうか及びその程度をも考慮」すると述べています(同旨東京地裁平成11年11月4日判決)。

 どういうことかと言うと、原則は、相手方の住所地・夫婦の共同生活地であったアメリカで裁判をやらなければいけないけれど、日本人妻が日本に帰国せざるを得ないのは、アメリカ人夫のせいだ!と言える状況なら良いわけです。一番分かりやすいのは、アメリカ人夫が日本人妻に暴力を振るっていたというようなパターンですかね。

 アメリカ人夫が日本人妻に日常的に暴力を振るっていたにも関わらず、日本人妻に「裁判したけりゃ、アメリカに留まれ!」というのは余りにも酷ですし、暴力を振るっていた以上、アメリカ人夫が日本の裁判に応じなければならなくなっても、その面倒は、いわば「自業自得」っていう感じですよね。

 つまり、相手方が日本国内にいない場合でも、日本の裁判所で離婚裁判ができる場合があるということです。

 ちなみに私は弁護士歴が8年目ですが、相手方が外国にいたにも関わらず、日本の裁判所で手続きを行ったケースを9件扱いました。このうち、8件は夫婦の共同住所地も外国でしたが、日本の裁判所が「管轄なし」ということで却下したのは、1件、現在も事件が係属中なのが1件であり、残り7件は、日本の裁判所に管轄を認めています。

 なお、日本で裁判ができるか否かについては、上記の裁判例も示すように、他にも考慮要素が複数あります。

 なので、仮に、今、国際離婚を考えているものの、相手方が日本国内にいないから日本での裁判手続きを諦めているという方がいらっしゃったら、是非、一度、弁護士に相談してみて下さい。

 次回は、2つ目の問題点である準拠法について話をしようと思います。

弁護士 長谷川桃