離婚をする際には、さまざまな金銭的請求が発生することがあります。財産分与請求や養育費、離婚成立までの婚姻費用分担請求、そして慰謝料請求など、その費目はさまざまです。

 中でも、離婚を考えておられる方から聞かれることが多いのが慰謝料請求です。

 芸能人等の離婚報道を見ると、数千万、場合によっては億単位の慰謝料の支払いが合意された旨のニュースにも接します。これらの多くは協議離婚であり、通常は合意書の中で口外禁止条項等が付されているため、これらの報道の根拠は不明です。
 したがって、本当にその額の合意がなされたのか、純粋に慰謝料の額なのかそれとも財産分与等の離婚にまつわる一方配偶者から他方配偶者への支払額の総額なのか、実際にはわからないことも多いです。

 とはいえ、一般の方の離婚の際の慰謝料額が数千万単位になることはほとんどありません。
特に、裁判をした場合には慰謝料額はもっと低額になります。

 離婚に際して慰謝料請求が発生するのは、慰謝料が不法行為により相手方に精神的損害を与えたことを理由とするものと考えられることから、不法行為といえるほどの行為が、一方配偶者に認められる場合と考えられます。

 具体的には、まず、離婚の原因がそれ自体として損害賠償の成立要件を満たす=不法行為に該当する場合に慰謝料が認められることに異論はありません。配偶者の一方の暴力や虐待(いわゆるDV等)はその代表例といえるでしょう。
 また、同様にいわゆる不貞行為も慰謝料請求が認められる典型的な場面となっています。

 では、離婚原因ではあるがどちらの配偶者にも責任がないようなケース、たとえば、「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(民法770条1項4号)で、その精神病の原因に他方配偶者がかかわっていない場合はどうでしょうか。

 精神病を罹患した配偶者にとっては、何ら自分に責任がないのに、他方配偶者からさらに離婚を請求されるというのは、極めて大きな精神的損害のようにも思われます。
 しかし、そもそも法律がこのような場合を離婚原因として定めて離婚を認めている以上、これを「不法行為」と評価するのは不当といわざるを得ません。

 逆に、精神病にかかった配偶者に対し、離婚原因を作ったとして他方配偶者から慰謝料請求をすることもできないでしょう。
 こうした請求はそもそも社会通念上許容される請求ではないでしょうし、民法自身、精神上の障害については、客観的に不法行為に該当する場合でさえその責任を免除する旨を規定しているからです(民法713条)。

 もっとも、判例も、離婚慰謝料が認められるのは、相手方の行為が身体、自由、名誉の侵害に該当する場合に限られないとしており、どのような場合に慰謝料請求が認められるかは簡単な問題ではありません。

 なお、一般的な離婚慰謝料の額は事案に応じ、およそ300万円までの範囲で認めるのが多くの裁判例です。

 どのような事案で慰謝料請求が可能なのか、その場合の額はどれくらいかは容易には判断できません。
 この問題でお困りの方は、弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。