内縁(事実婚)の妻(夫)に相続権が認められていないけれども、内縁の配偶者を保護すべく、一定の範囲で内縁配偶者を法律婚の配偶者と同様に扱われています。このことは、以前のブログで書いていますので、過去のブログに譲ります。

 内縁の妻(夫)に相続権がないことは、一般的に知られるようになっていることから、内縁の配偶者のために生前贈与・遺言による贈与(遺贈)がされることも目にするようになりました。

 ただ、心配なのは生前贈与による時に、きちんと書面にしていないことがあることです。

 たとえば、内縁の夫から「俺が死んでも住むところに困らないように、マンションをお前に贈与しておくよ。」と言われていたとします。そして、内縁の夫が亡くなった。

 この場合、生前贈与ということになります。よく生前贈与と言われますが、あくまで贈与です。

 内縁の夫の相続人から「贈与の証拠を見せろ。」と言われた場合に備えて書面が重要であることは言うまでもないでしょう。
 では、内縁の夫の相続人が贈与を認めたからといって安心できるでしょうか。
 書面に寄らない贈与は撤回できることから(民法550条)、相続人から撤回される恐れがあります。そのためにも、内縁の夫から書面をもらっておくことが重要なのです。

 とはいうものの、書面がなくても助かることがあります。民法550条ただし書で、「履行の終わった部分についてはこの限りではない。」とされ、撤回できないのです。
 裁判例では、不動産の契約書や実印を渡していた場合に「履行が終わった」とみとめられています。

 ただ、そもそも、相続人が撤回をすることなんて許されるのでしょうか。事情によっては、相続人による撤回は信義則に反する場合があるでしょう。