当たり前の話ですが、離婚をするためには、そもそも前提として婚姻していることが必要です。

 では、婚姻していること、とは何なのでしょうか。

 婚姻届を役所に提出すれば、即婚姻成立になるのか?

 ここで問題になるのが、「婚姻意思」についてです。

 「婚姻意思」の有無とは、夫婦当事者間に、真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定を欲する効果意思があるかどうかを指します。要は、本当に夫婦になる気があるのかどうか、ということです。

 そこで、いくら届出をしても、当事者間に婚姻意思がなければ、婚姻はそもそも無効となります。

 ある人が相手の承諾を得ずに署名や押印を偽造して、勝手に婚姻届を出してしまったような場合は、婚姻は成立しておらず、無効となります。

 また、子に嫡出子としての地位を得させるためだけに一時的に婚姻をしたような場合にも、無効と判断されています(最判昭44.10.31)

 その他に一番身近にあるのは、「偽装結婚」の問題でしょうか。

 外国人に在留資格を得させるために、形だけ婚姻届を出すような場合が典型的なケースです。

 このような偽装結婚を防ぐため、外国人との結婚によって、「日本人の配偶者等」の在留資格の申請をする際には、本当に愛し合って結婚していることを証明するため、2人の様々な時期のデートの写真や、2人のなれそめなどについて、こまごまと書類を提出することが求められます。

 日本人同士の結婚では、「本当に二人は愛し合っているのか」等と役所の窓口で確認されることはありませんから、なんだか不思議な感じもしますね。

 また、同性愛者の方が職場の目や家族のプレッシャーから逃れるため、異性の同性愛者の方と婚姻届を出すケースもあるようです。

 このような場合、裁判所の考え方から言えば婚姻無効と考えるべきなのでしょうか。彼らには「社会観念上の夫婦関係を作る意思がある」といえるのでしょうか。

 他国の同性婚解禁のニュースを聞いたり、「友達婚」などという言葉が流行ったりするなか、夫婦関係という定義も改めて考える時期なのではないかと思います。

弁護士 井上真理