自分の配偶者が不貞行為をしていると知った時、多くの人は、自己の配偶者よりも強く不貞相手のほうを憎み、不貞慰謝料を請求しようとします。

 もっと簡単な言葉で言えば、夫の不倫を知った妻は、夫ではなくまず不倫相手の女性に対して、慰謝料を払え!と責めるのです。

 しかし、不貞行為は夫と女性の二人でした行為ですので、法律上は「共同不法行為」といって、2人とも責任がある、という考え方をします。

 さらに、裁判所は、一般的に不倫によって家庭が壊れた場合、どちらかと言えば夫のほうが悪い、と判断しています。

参考(東京地方裁判所、平成16年9月3日判決 損害賠償等請求事件)

 不貞行為による平穏な家庭生活の侵害は,不貞に及んだ配偶者が第一次的に責任を負うべきであり,損害への寄与は原則として不倫の相手方を上回るというべきであるところ,本件の経緯等をふまえると,被告の配偶者に対する権利侵害の寄与度は,原告3割,被告7割と考えるのが相当であるとして,原被告が被告の配偶者に支払った慰謝料合計額のうち3割が原告の負担すべき部分であり,原告は,それを超えて支払った金員について被告に求償できるとした事例

 そこで、奥さんから訴えられた女性が出来る手段として、「訴訟告知」という手段があります(民事訴訟法第53条)。

 奥さんとの訴訟の際中で、夫に対して訴訟告知をしておくと、夫に対して、この訴訟に参加したのと同じ効力が及びます。そして、女性に対して裁判所から例えば慰謝料100万円を払え、という判決が出た場合に、その後夫に対して、支払った慰謝料100万円のうち、6割はあなたの責任なので、60万円を私に返してください!などと求償を求めることができるのです。

 不倫したのは確かに私も悪かったけど、私だけが悪いわけじゃない!と思った方は、是非活用してみてください。

弁護士 井上真理