内縁関係はあくまで法律上の婚姻関係ではなく、法律上の婚姻関係の規定が直接適用されることはありませんが、共同生活の実体にかかわる規定が、内縁関係にも類推適用されることは、何度かブログで書いてきました(過去のブログを見てみてください)。
氏は、共同生活の実体とは関係がないことから、民法750条(夫婦の氏)に関する規定は、内縁関係には類推適用されていません。
民法750条は、「夫婦は、婚姻の際定めるところに従い、夫又は妻の氏をしょうする。」と規定しています。
内縁の一方が、他方の氏を称する方法として、単に通称として名乗る方法ができますが、戸籍上の氏についても他方の氏を称したいと考えた場合、「やむを得ない事由」があるとして戸籍法107条により、氏の変更を求めることが必要になります。
では、どのような場合が「やむを得ない事由」に当たるのでしょうか。
札幌高裁決定昭41・10・18家月19・4・72では、「呼称秩序の不変性確保という国家的、社会的利益を犠牲にするに値する程の高度の客観的必要性を意味する」と解しており、厳格な要件を求め、内縁の妻の氏の変更を認めませんでした。
残念ながら、長期の同居の事実等があり内縁関係と認められるとしても、氏の変更までは容易には認めてはもらえないということです。