事実上の婚姻関係にある夫や妻が死亡した場合に、相続権は認められないこと、財産分与の規定の類推適用も認められないことはご存知の方も多いと思います。

 一方、夫婦が離婚する際は、夫婦が協力して生み出した財産は夫婦共有財産だとして財産分与が認められます。

 では、事実上の婚姻関係にある場合には、協力して生み出した財産とは言えないのでしょうか。

 最高裁によると、

「死亡による内縁解消のときに、相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道を開くことは、相続にによる財産承継の構造の中に異質の契機を持ちこむもので、法の予定しないところである。」(最判平12・3・10民集54・3・1040)

と述べており、死亡時という相続関係に夫婦共有財産という財産分与の法理を持ち込むことは法が予定していないというのである。

 ようは、法律でそう決まっているということなのでしょうか。

 しかし、下級審では、特殊な事情がある場合には、内縁の妻に共有持ち分を認めた興味深い判決があります(大阪高判昭57・11・30家月36・1・139、判タ489・65)。

 事案を簡単に言うと、内縁の妻が稼業を経営し、その収益で購入した不動産(内縁の夫名義)の帰趨が争いとなったものでした。

 判決としては、

「正式の婚姻関係であると、内縁関係であるとを問わず、妻が家事に専従しその労働をもって夫婦の共同生活に寄与している場合とは異なり、夫婦が共同して稼業を経営し、その収益から夫婦の共同生活の経済的基盤を構成する財産として不動産を購入した場合には、右購入した不動産は、たとえその登記簿上の所有名義を夫にしていたとしても、夫婦間においてこれを内縁の夫の特有財産とする旨の特段の合意がない以上、夫婦の共有財産として同人らに帰属するものと解するのを相当とすべき・・・」

として、内縁の妻の寄与分が1/2であり、1/2の共有持ち分を妻に認めました。

 夫婦共働きが当たり前といえる今日では、もしかしたら、内縁配偶者の死亡の場合にも上記裁判例のように共有持ち分権を認められるような事案が多くなるかもしれません。あくまで私見ですが・・・・・。