1 はじめに

 離婚に伴い当事者の一方から他方に対してなされる給付(離婚給付)には、慰謝料、財産分与、養育費があります。

 これらのうち、慰謝料と養育費は、ほとんどの場合に金銭で給付されますが、財産分与については、不動産等の資産が給付される場合と、預貯金の分与など金銭で給付される場合とがあります。

 そして、このような離婚給付がなされる際に検討しなければならない税金は、「贈与税」(贈与により財産を無償で取得した場合に、財産を取得した人に課される税金)と「譲渡所得税」(資産を譲渡したことによって所得が生じた場合に、財産を譲渡した人に課される税金)です。

 以下、慰謝料、財産分与、養育費を払ったり貰ったりした場合に税金はかかるかについて、その概要を説明します。

2 給付を受けた側の税金関係

 離婚給付としての社会的妥当性が認められる限り、贈与とはならず、贈与税は課税されません。

 例えば、慰謝料は、贈与ではなく損害の賠償です。損害賠償は、所得税法という法律によって、相当なものである限り非課税とされています。

 養育費も贈与ではなく、親の子に対する扶養義務の履行と考えられており、相続税法によって、通常必要と認められる範囲のものであれば、贈与税は課されません(ただし、将来分の養育費を一括して受け取る場合には、課税される可能性があります)。

 財産分与についても、結論は同様で、財産分与義務の履行であって贈与ではないので、その対象が金銭の場合も不動産等の資産である場合も、過当なものではない限り、贈与税の対象にはなりません。

 このように離婚給付を受け取る側は、贈与税(や譲渡所得税)は課税されませんが、例えば、財産分与として不動産等を取得した場合には、別途、不動産取得税や登記の際の登録免許税は課税されます。

3 給付を行った側の税金関係

 金銭の給付がなされる場合には、原則として、税金はかかりません。

 しかし、不動産等の資産を財産分与として給付した場合には、譲渡所得税の対象とされ、給付をした者に譲渡所得が生じれば、課税の対象となります。

 離婚の際の財産分与は、代金の授受がないことが多いので、一般感覚として違和感があるかもしれませんが、(代金を貰っていなくても)財産分与義務の消滅という経済的利益を得たことを「所得」として捉え、課税対象としているようです。

 その税額の計算方法は、概ね、以下のとおりです。

①居住用財産ではない不動産の財産分与

「不動産の時価-取得費-譲渡費用」

を基礎として、所有期間が5年を超える場合は、所得税15%、住民税5%、所有期間が5年を超えない場合は、所得税30%、住民税5%が課税されます。

②居住用財産の財産分与(このパターンが多いと思われます。)

この場合は、3000万円の特別控除があるので、

「不動産の時価-取得費-譲渡費用-3000万円」

が基礎となります(よって、大雑把にいえば、財産分与をする不動産が3000万円以上値上がりしていなければ、税金はかかりません)。また、所有期間が10年を超える場合は、税率も軽減されています。

 ただ、例外や特例もあるので、詳しくは専門家に相談することをお勧めします。

弁護士 細田大貴