離婚の中でも、特に熟年離婚で長年主婦であった女性が離婚を望んでいる場合には、『年金分割』という手続きを知っていると知らないのでは、大きく違います。
 そこで、今日は『年金分割』についてお話します。

 『年金分割』とは、分割の手続きをすることにより、2007年4月以降に離婚した夫婦の間で、婚姻期間中に納付された厚生年金と共済年金について、納付記録が分割されて、主婦であった女性でも夫の厚生年金(共済年金)の一部を受給できるようになるというものです。

 これは、夫婦のどちらが離婚の原因を作った、などという話とは全く関係がなく、原則としてどちらかが厚生年金(共済年金)に加入しており、2007年以降に離婚した場合には分割を請求する権利があります。

 そして、裁判所においても協議離婚においてもその割合は、半分、つまり0・5という運用が定着しています。

 離婚すると、私の老後は国民年金しかもらえなくなる、たいした蓄えもないし不安、という理由で離婚をためらっている主婦の方には、大きな安心を与える制度であると言えます。

 手続きとしては、年金事務所に行って『年金分割のための情報通知書』を発行してもらい(申請してから受け取るまでに1~2週間かかるので、余裕をもって手続きを初めて下さい。)、配偶者との間で、話し合いをします。

 話合いで分割割合を0.5とするなどと合意ができた場合には、請求者の年金手帳と、戸籍謄本などの婚姻期間が分かる書類とともに、

 ① 二人で年金事務所に行き、年金分割の手続きをする
 ② 年金分割の合意をした公正証書を作成し、公正証書の謄本もしくは抄録謄本をもって手続する
 ③ 年金分割の合意をした協議書などを公証役場に持って行き、公証人に認証してもらい、これをもって手続する

のいずれかの方法をとれば、手続きが出来ます。

 話合いがまとまらない場合や、離婚について調停や裁判の手段をとった場合には、年金分割について分割割合を記載した調停調書や判決書があれば、手続きが可能となります。

 年金制度などは仕組みが難しく、面倒な手続きもありますが、手続きをするとしないのとでは得られる経済的価値が大きく違う場合もあるので、離婚の相談の際には気にかけておいてください。

弁護士 井上真理