内縁関係(事実婚)にあれば、届出による効果以外の婚姻の効果を及ぼすことが現在の流れです。

 たとえば、

① 同居扶養義務
② 婚姻費用
③ 貞操義務
④ 第三者に対する関係(事故死の慰謝料、遺族扶助料、日常家事債務等)
⑤ 夫婦財産の共有推定
⑥ 解消による財産分与
⑦ 父子関係の推定など。

 もっとも、裁判所は、内縁を婚姻関係とは区別しており、内縁配偶者を保護する必要性から婚姻関係法規の「準用」にとどまっていることから、あくまで法律婚主義と抵触しない範囲で内縁配偶者を保護しているに過ぎないことに注意が必要です。つまり、内縁関係の認定に一定の基準があり、この基準をみたせば、法律婚に近い保護が与えられるという単純なものではなく、当事者の関係を個別具体的に検討し、内縁配偶者として保護すべき必要性を考慮のうえで、法律婚主義に抵触しない範囲であれば、内縁関係にあるとを認定していると考えられます。

 内縁関係を認めた裁判例を一つ紹介してみます。

大阪地判平成3(1991)・8・29家月44・12・95

 内縁の妻が、内縁の夫(国家公務員)の死亡退職金について、内縁の妻と内縁の夫の相続人(きょうだい)の双方が、給付請求権があると主張したところ、国、共済組合が誰に支払うべきかわからないとして供託したために、供託金の還付請求権の有無が争われたました。

 この事案では継続的な同居の事実はありませんでした。とすると、内縁というには不十分だとの印象を受けます。しかし、互いのマンションへの行き来し、寝泊りすることが頻繁であったこと、宿泊を伴う旅行もしていること、内縁の夫が病弱で、精神的にも日常的にも内縁の妻を頼りにしていたこと等から、事実上の夫婦と認めました。

 この事案では、死亡退職金の趣旨が残された遺族の生活保護であることが退職金規定から読み取れることや、事実上の配偶者も含む規定があったこと、相続人がきょうだいであり、法律婚主義との抵触が少ないことから内縁の成立要件を緩和したものと思われます。