前回、婚約の不当破棄についてお伝えしました。
今回は、具体的にどれくらいの慰謝料が認められるのか、前回紹介したもの以外の裁判例を簡単に紹介しようと思います。認容額が多いと感じられるでしょうか、それとも少なく感じられるでしょうか。
東京地裁・平成22年9月24日 平成21年(ワ)第13083・23052号
慰謝料70万円(請求慰謝料額200万円)
婚姻費用等431万7967円
弁護士費用50万円
事案・要旨
結納、結婚式、同居、新婚旅行後に性の不一致や収支計画の不一致を原因に、被告が一方的に婚約を破棄した。裁判所は、被告に責任があるとしながら、その原因が事前に判明しにくい性の不一致にあること、婚約・同居期間の短さ等を考慮した結果、慰謝料を70万円とした。
東京地裁・平成19年5月16日 平成18年(ワ)第4367号
慰謝料45万円(婚姻破棄は認めず、暴行による流産の点で認容)
事案・要旨
原・被告は、いわゆるダブル不倫の末に重婚的婚姻予約をしたが、双方の婚姻関係が完全に破綻していたかは微妙で裁判離婚が認められるか不明な状況であった。裁判所は、実現困難な婚姻予約が破棄されたに過ぎず、不法行為責任が生じるような損害は認められないとした。ただ、原告が暴行を加え、被告を流産させたことに関する損害賠償だけを認めた。
東京地裁・平成18年9月13日 平成18年(ワ)第4315号
慰謝料10万円(請求慰謝料額1100万円)
事案・要旨
被告は10年の交際後、婚約指輪を被告に渡し婚約した。しかし、被告は、原告の浪費癖が婚約後も治らず、結婚生活に不安を持ち、婚姻解消を決意した。被告は婚姻解消の意思を伝えることをせずに他の男性と肉体関係を持ち、その一週間後にその事実を打ち明け、関係解消を打ち明けた。
裁判所は、婚約解消の原因は不当とはいえないが、関係解消の方法が不当であるとして 慰謝料10万円を認めた。
東京地裁・平成18年2月14日 平成16年(ワ)第17049号
慰謝料300万円(請求500万円)
事案・要旨
被告は、原告と交際約2年の後、プロポーズし両親に挨拶して婚約した。被告は婚約期間約2年(同棲期間も約2年)の間に複数の男性と肉体関係を持ち、結婚式の4日前であっても他の男性と肉体関係を持ち原告を裏切り続け、結婚式直前にそのことを知った原告との関係を修復する努力も全くせず、実家に戻ったまま帰らず、一方的に婚約を解消した。更に、責任を免れようと虚偽の事実をもって原告を非難するに及ぶ自己中心的な態度に終始したものである。裁判所は、慰謝料として300万円を認容した。
東京地裁・平成16年6月24日 平成15年(ワ)第10450号
慰謝料150万円(請求300万円)
事案・要旨
被告は、原告との重婚的婚約の期間があったが、離婚し、原告の両親にも挨拶を済ませたことによって婚約が成立した。
被告は、交際開始から現在まで、婚姻の意思を有していると原告に伝え、友人や両親にも紹介する等、原告の婚姻への期待を大きくさせ、原告に相当額の経済的支出をさせていたにもかかわらず、他の女性と旅行に行くという背信行為に及んだ。他方、重婚的婚約の期間もあり、また、結納や婚姻指輪の交換といった儀礼的行為がなく、結婚式の日取りも未定であったことから、慰謝料を150万円が相当だと判断した。
東京地裁・平成15年10月24日 平成14年(ワ)第11121号・平成14年(ワ)第23356号
慰謝料300万円(請求1000万円)
事案・要旨
被告は、原告に対して結婚したいと言い、婚約指輪を渡し、原告の両親に対して結婚意思を伝え了解を得た。被告は、婚姻中であり重婚的婚姻予約であるが、実質的に婚姻生活が破綻していたことから婚約は有効である。
原告は、被告のDVに耐えかねて、婚約の約1年後に被告との婚約を解消した。