こんにちは、弁護士の平久です。

 離婚問題については、当事者同士の話し合いで解決できればそれに越したことはありません。しかし、決裂する場合もありますから、裁判になったら離婚できるのかを検討することは重要です。それには、法律の定める離婚事由を充たすかを考えていかなければなりません。そこで今回は、裁判上の離婚事由である「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」(民法770条1項5号)について考えてみたいと思います。

 この「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」というのは、婚姻関係が深刻に破綻し、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがない場合をいうものとされています。

 では、どういう場合に婚姻関係が「破綻」したと言えるのでしょうか。これについては一義的に明確な回答をするのは困難です。人によって「破綻」の定義、イメージが異なるからです。このような曖昧な概念ですから、裁判官の判断によって破綻が認定されたり、されなかったりすることもあり、代理人としても悩ましいところです。個人的には、調停・和解などで話し合いを尽くしても折り合いがつかなければ破綻を認定しても良いのではないかと思うのですが。

 法律上曖昧な概念が要件となっている場合には、先例においてその要件を判断する際に考慮されている要素を検討する必要があります。

 まず、誰もが考えるのが別居です。夫婦の婚姻生活の核となるのは共同生活を営むことであり、別居していることは共同生活を終了させるものだからです。別居の事実というのは、客観的な事実であり、訴訟になっても必ず挙げられる基本的な考慮要素です。法制審議会が平成8年に決定した民法の一部を改正する法律案要綱でも、「5年以上継続して婚姻の本旨に反する別居をしている」ことを離婚理由としています。

 では、別居すればすぐ離婚が認められるかというとそうとも言えません。要綱の規定からも分かるとおり、ある程度長期間別居が続く必要があります。喧嘩して夫婦の一方が家を飛び出してしまった場合のように、別居期間が短いとしばらく経てばまた旧の鞘に収まるのではないかと考えられてしまうからです。別居期間5年程度というのは目安にはなりますが、同居期間との対比やその他の事情も考慮されますので、個別のケースについては弁護士にご相談されることをお勧め致します。

 次回も婚姻関係の「破綻」を認定する際の考慮要素となる事情を検討していきたいと思いますのでよろしくお付き合い下さい。

弁護士 平久真