前回は、配偶者の親族との不和を理由として離婚できるのか否かについてお話しました。親族との不和という問題は、夫婦間の問題を直接の原因としていない点で慎重に判断され、単に一方配偶者の親族と不仲であるというだけでは離婚原因となるとは考えられていないようでしたね。

 では、親族との不和が離婚原因となると認められる場合とは、どのようなものなのでしょうか。

 今回は、親族との不和が、婚姻関係を継続し難い重大な事由(民法770条5号)に該当するとして離婚原因として認められた裁判例を紹介します。夫婦のうち、妻の父母と同居していた夫からの離婚請求の事例(山形地判昭和45年11月10日昭和43年(タ)第14号)です。

 妻の父母が、夫の学歴を軽蔑したり、夫の生家が資産家でないことから夫の親族を軽視する態度を強く示したり、家庭内での金品等が紛失すると同金品は夫が持ち去ったものであると口外したりする等して夫を侮辱軽視し、また、妻も父母に服従的であって、父母側に組みするか傍観者的態度に終始していたというものです。そして、夫はそれらの妻や妻の父母の態度に対して疎外感を強くし、家出をして一度は帰宅したものの、再び約8年間別居を継続した後、離婚請求をしたというものです。

 この事例では、一方の配偶者の父母が不適切な言動を繰り返したというだけではなく、一方の配偶者までもが父母の側に組みしたり、父母と他方配偶者との間にできた軋轢に対してなすべき調整を図らなかったりしたという事情、さらに約8年間という長期の別居期間があるという事情があります。

 前回ご紹介した裁判例は、一方配偶者に不適切な言動はありましたが、一方配偶者やその母親が夫婦関係の修復に積極的態度を示している等、今回ご紹介した裁判例に比べると夫婦関係の修復可能性の有無という事情はかなり異なるようです。

 やはり、単に一方配偶者の不適切な言動があって軋轢が生じているという事情だけでは、離婚原因となるとは認められないようであり、配偶者の傍観的、同調的態度等、他の事情が相まって離婚が認められるということになると考えられているようです。