こんにちは。朝晩はだいぶ冷えるようになってきましたね。体調には気をつけてお過ごし下さい。
 今回は、詐欺又は強迫による婚姻の取消しについて若干述べていきたいと思います。お付き合いよろしくお願いします。

 詐欺又は強迫によって婚姻をした者は、その婚姻の取消しを家庭裁判所に請求することができます(民法747条1項)。

 本条項は、当事者の利益を保護する私益的取消しに関するものであり、検察官からその取消しを請求することはできません。また、取消しは、家庭裁判所に対する訴えによらなければなりません。さらに、民法総則の詐欺・強迫の取消しの規定は適用されません。

 取消権者は、詐欺・強迫を受けた当事者に限られます。詐欺・強迫は、相手方配偶者によるものか第三者によるものかは問わないですが、取消請求の相手方は、第三者による詐欺・強迫の場合も含めて、相手方配偶者です。

 詐欺・強迫は、違法性を帯びるやり方で、相手方を欺いて錯誤に陥れ、または、相手方に威圧を加えて畏怖させ、これにより、婚姻の合意をさせることをいいます。

 詐欺は、人の属性について虚偽の事実を告げたり不利な事実を黙秘する形で、また強迫は、相手方に危害が及ぶことを告げる形で、行われますが、いずれも、その行為が、相当強度な違法性を帯びることを要します。さらに、詐欺については、一般人にとって相当重要なものとされる程度の錯誤に陥ったこと、また強迫については、婚姻の意思決定において主要な動機になったことを要します。

弁護士 大河内由紀