こんにちは。寒くなってきましたね。
 本日は、配偶者に借金がある場合の離婚請求についてお話しします。

 夫婦関係において、借金は大きな問題になりがちです。特に結婚前から借金があったのに、それを結婚相手に告げずに結婚して、結婚後に高額の借金の存在が発覚したときは、即、離婚の話しになることもあると思います。このような状況では、一方の配偶者が、借金をしている方の配偶者を一方的に責め立てがちですが、それでは、離婚は実際に認められるのでしょうか。

 例えば、次のような事例があります(仙台地方裁判所昭和60年12月19日判決)。

 妻Xは、夫Yと婚姻しましたが、婚姻時、実はYには、600万円の借金がありました。しかし、Xは、Yから、借金があることは聞かされていましたが、その額や借金の理由までは知らされていませんでした。婚姻後も、Yは、125万円、80万円、200万円と借金を重ねました。Yはもともと生活費として月13万円をXに渡していたのですが、借金返済が苦しくなってきたので、生活費を3万円しか渡さなくなりました。そしてXはYに対し離婚調停を申立てました。その後Yは、総額800万円の借金に一本化しました。

 このような状況で、離婚訴訟になりました。

 さて、このような離婚訴訟において、離婚が認められるでしょうか。

 判決においては、まず、この夫婦においては、借金のほかには、婚姻関係を継続するうえで支障はないと認定しました。そして、Yの借金返済が相当困難としても、Xが共働きして収入を家計に入れれば、借金返済も家計の維持も楽になるといえる、その上、Yの借金の原因は、Yの弟の私大進学やXとの結婚などに伴う費用の不足を賄うためであり、Yにとってやむをえなかったともいえ、Yを責めることもできないと示しました。それらを踏まえると、婚姻を継続し難い重大な事由があるとはいえない、と判断されました。

 このように、相手方配偶者が借金をしている、その理由もわからない、相手方配偶者は説明してくれない、ただ、自身は仕事をしていない(専業主婦)、という状態では、自分もできるだけ仕事をするなどして、家計を助けたうえでなければ借金をしている配偶者を責められない、簡単には離婚は認められないということになりそうです。

 この考え方の根底には、夫婦の協力扶助義務があると思います。他方に借金があるなら、共働きしてできる限り他方を助けなければならないということです。多額の借金がある配偶者との離婚を望むなら、共働きするなどしてできる限り配偶者を助けておいた方が、「まだ修復可能」と言われる余地が少なくなりそうです。