こんにちは。本日は、過去の義理の両親とのトラブルをきっかけとして夫婦仲が悪化した場合についてお話しします。
義理の両親の行為が問題となり、それをきっかけとして夫婦仲が悪くなることはよくあります。しかし、義理の両親の行為それ自体を離婚原因として裁判所で離婚を求めても、通常、離婚は認められません。一時の義理の両親の行為に対する不満を引きずり続けていてもよいことはないということです。
例えば、次のような例があります【東京地方裁判所昭和59年12月26日判決】。
結婚式を挙げた際、結婚式の引き出物を妻側の親族がすべて持ち帰ったことをきっかけとして、夫が妻に対する不信感を抱くようになった(なお、入籍は結婚式よりも後)。
その後、夫は、妻の態度に不満を抱くたびに、この結婚式の引き出物のことをはじめに持ち出して妻を難詰するようになった。結婚後10年ほどして妻が夫に生活費の増額を求めたが、夫はいったんこれを拒み、妻は「生活費を渡すのは当たり前だ」との発言をしたため、夫は「感謝の念を述べないと生活費を渡せない」と言い、妻に生活費を渡さなくなった。
妻は調停を申立て、夫は妻に生活費を渡すようになるが、夫が妻を難詰した際、妻が再度「生活費を渡すのは当たり前」との発言をし、夫は再度生活費を渡さなくなった。その後夫は妻を難詰した際、首を絞めるなどの暴力を振るった。そして妻は離婚訴訟を提起した。
この事案において、裁判所は、夫が妻に対し生活費を渡さなかったことや執拗な難詰、暴力が離婚の直接の原因となっていると認めました。
この事案では、夫が妻に対し不信感を抱く遠因が妻の親族が引き出物をすべて持ち帰ったことにあったにせよ、その後しばらく夫婦関係は平穏であったし、引き出物の件は、夫婦の婚姻関係破綻に対して直接的に影響するようなものではなかったとのことです。この事案では、結婚式から15年近くもの間、夫が妻に対する難詰の際、結婚式のときの妻側の行為をまず非難するところから始まったとのことですが、このように過去の一方配偶者の親族の行為が不適切だったとしても、それを延々持ち出して非難するようなことは、婚姻関係の破綻の有責性を基礎づける可能性を示唆しています。
離婚の相談案件においては、けっこう、結婚のときの親族間トラブルを延々とひきずっているケースがあります。たしかに結婚のスタートからして親族間のトラブルになると、その後も引きずりがちですが、その後もそれを持ち出し続けて相手方を非難し続けることは自ら有責配偶者となってしまうリスクを負いますので、早めに気持ちを切り替えて、過去のことは過去のこと考えるようにした方が賢明でしょう。