こんにちは。本日は、配偶者が多額の借金をしている場合、これが離婚事由となるかどうかについてお話しします。

 今のご時世、借金を抱えている夫婦は少なくありません。借金の原因はいろいろありますが、借金が発端で夫婦仲が悪くなった、という相談はよくあります。

 しかし、生活していく上で借金せざるを得ない場合もあります。したがって、多額の借金があることだけを理由に、安易に離婚が認められるわけではありません。

 例えば、夫が確たる見通しもなく頻繁に転職し、借金を重ねたあげく、妻に借金返済の援助を求め、さらに、多額の借金の返済に追われ、生活費などを妻に渡さず、家計の維持を妻に任せ、その上、心身に持病のある妻に対して暴言を吐いていたようなケース。この事案では、婚姻を継続し難い重大な事由があるとの判断に至りました(東京高等裁判所昭和59年5月30日)。

 これに対し、夫が婚姻直後から何度も借金を繰り返し、妻に借金の理由や返済方法について納得のいく説明をせず、生活費に事欠く状態になったというケース。こちらの事案では、夫の借金の理由は、弟の私大進学費用や妻との結婚などに伴う費用を賄うためであり、借金はやむを得なかったというものでした。また、妻が共働きして収入を家計に入れればよい、つまり、妻が夫婦の協力扶助義務を尽くしていないと判断されました。そのため、この事案では、婚姻を継続し難い重大な事由があるとは認められないとの判断に至りました(仙台地方裁判所昭和60年12月19日)。

 これら二つの事案は、二つとも、夫に多額の借金があったというものです。しかし、結論は異なっています。

 これは、借金の理由や、夫の勤労態度、妻の協力の有無など、総合的な判断がされた結果だと考えられます。

 特に二つ目のケースからは、妻も夫の収入が低いと責めるだけではなく、働けるなら働くなど努力しなければならない、ということがわかります。

 したがって、夫の多額の借金を理由として離婚を求める場合には、借金の理由や経緯、夫の態度等に加え、妻は収入を得ようと努力したがそれでも生活費が足りなかったとか、妻の健康状態や子どもの養育などのために十分に働くことができなかったという事情が必要になります。