今回は、不貞行為の相手方に対する慰謝料請求の消滅時効の起算点を、不貞行為について知った時ではなく、離婚時とした事例をご紹介したいと思います。

不法行為に基づく損害賠償請求権の短期消滅時効

 不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者らが損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅するとされています(民法724条)。
 つまり、「損害」と「加害者」が両方判明した時点から、時効が進行することになります。

配偶者に対する慰謝料請求権の消滅時効の起算点について

 一方の配偶者が、他方の配偶者の不貞を知った場合、離婚に至ったか否かで起算時が異なります。

 離婚に至っていない場合は、不貞の事実を知った時からとされています(最高裁平成6年1月20日判決)。これに対し、離婚に至った場合は、離婚が成立した時からとされています(最高裁昭和46年7月23日判決)。

 このように、起算時が異なるのは、「損害」が確定したか否かが異なるためです。
 つまり、不貞行為による慰謝料には、不貞を知ったことによる精神的損害というものだけではなく、不貞を原因として離婚に至った場合には、離婚に至ったこと自体も不貞行為を起点とした損害に含まれることになるため、離婚をしたこと自体の精神的苦痛も慰謝料に含まれるのです。そうすると、離婚をした時点で慰謝料額が決まるので、離婚成立時に「損害」が確定するわけです。ですので、離婚に至った場合には、離婚成立時が消滅時効の起算点となるのです。

不貞相手に対する慰謝料請求権の消滅時効の起算点について

 これに対して、不貞相手に対する慰謝料請求の場合には、離婚ということがあり得ない以上、消滅時効の起算点は、不貞行為があったことを知った時からとなりそうです。確かに、実際には、そのように考えるのが妥当とも思われるのですが、東京地裁平成17年11月17日判決では、不貞相手に対する慰謝料請求権の消滅時効の起算点を離婚成立時と判断しました。
 その理由として、継続的な不貞行為により離婚をやむなくされるに至った一方の配偶者が損害賠償を求める上では、夫婦の離婚が成立した時に初めて、一方の配偶者の損害が確定し、これを損害として認識することが可能な状態となったというべきであるから、その消滅時効についても、少なくとも当該離婚の成立以後の時点において起算するのが相当である、としています。

 このように、不貞相手に対する慰謝料請求をしようとする場合に、不貞行為を知った時から3年が経過した後でも、いまだ離婚が成立してから3年が経っていなければ、慰謝料請求が時効によって消滅していないと考えることも可能です。