1 債権の消滅時効

 通常の民事債権であれば、権利を行使できるときから10年間で時効により消滅します。権利を行使できるときは、支払期限が定められていれば、その日の翌日から10年間ということになります。但し、商事債権の場合は5年間で時効により消滅します。

 例えば、賃料のように、毎月ごとに支払期限が定められている場合、10年(又は5年(商事債権の場合))経過した賃料債権から毎月ごとに順次消滅していってしまうことになります。

 その他、特別の定めがある債権については、10年よりも短期で時効により消滅する場合があります。

2 時効による消滅を避ける方法

 民法に定められている時効の中断事由は、①請求、②差押、仮差押え又は仮処分、③承認の3つです。

 まず、①の「請求」ですが、これは「裁判上の請求」のことであり、単に裁判外で請求を続けていたとしても時効は中断しません。裁判外での請求は、支払の催告となるにすぎず、6か月以内に「裁判上の請求」をしなければ、時効を中断させることはできません。

 次に②の差押等についてですが、差押をするためには、債務名義(判決や執行認諾文言付きの公正証書等)が必要ですし、仮差押や仮処分についても、裁判所を通じた手続が必要です。

 したがって、これらの方法をとるためには、労力とコストがかかります。しかし、裁判上の請求が認められれば、その後の消滅時効は10年間となり、10年よりも短期の消滅時効が定められている場合にはメリットがあります。

 ③の「承認」については、裁判所を通じた手続が不要であるため、最も簡便な手段と思われます。「承認」とは、債権の存在を認めることですが、債権の一部を弁済した場合や債務者が弁済の猶予を申し出た場合等も承認として認められます。

 但し、債務者が、「承認」したことについて証拠を残しておかなければ、後日の紛争の際に立証できなくなってしまいますので注意が必要です。債権の存在を認める確認書の作成や一部弁済の場合には領収書の発行等が必要と思われます。

3 今後の時効制度について

 現在、民法の改正案が検討されており、その中では、現在バラバラに定められている時効期間の統一や時効期間の合意による伸長等が議論されています。

 また、時効による消滅を避ける方法についても、更新や停止等の概念に変更されることが検討されています。

 上記の①から③までの時効の中断事由は改正後も基本的には更新事由として存続すると思われますが、時効期間が短縮される可能性もあり、民法改正後は債権の時効の管理についても変更が迫られそうです。