1 はじめに
日本人には、「小木」や「矢作」といった氏があります。離婚した場合における氏について民法はいくつかの規定を置いています。
今回は、その規定について、説明していきたいと思います。
2 夫婦同氏の原則
民法750条は、「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」と規定しています。この規定は夫婦同氏の原則を定めています。
3 離婚した場合
では、離婚した場合、同氏となった夫婦の氏は、どうなるのでしょうか。
この点、民法767条1項は、「婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。」と規定しています。この規定は、民法771条によって、裁判上の離婚の場合にも準用されていますので、裁判上の離婚の場合にも、離婚によって氏を改めた者は、原則として、婚姻前の氏に復することになります。
しかし、常に離婚によって復氏するとなると、不都合が生じる場合があります。
例えば、婚姻によって「小木」から「矢作」に氏を改めた甲さんが、職場で働いていると仮定しましょう。この場合において、甲さんが離婚して、婚姻前の「小木」に復氏した場合、甲さんの職場の取引先は、甲さんが「小木」復氏したことで混乱することもあるでしょう。
また、免許証等の名義変更の煩雑さから、復氏を好まない場合もあるでしょう。
そこで、民法767条2項は、「婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から3箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。」と規定し、復氏を好まない者を保護しています。その手続は、必要事項を記載して届ければ足りるので(戸籍法77条の2)、簡単です。
弁護士 大河内由紀