離婚に際しては、親権や養育費、慰謝料、財産分与など、決めるべき離婚条件が多くあります。そして、離婚条件は、紙の上で定めるだけでは意味がなく、実際にそれを実施してもらわなければ意味がありません。相手が約束を守り、きちんと義務を果たしてくれるのであれば問題はないのですが、約束を守らず義務を果たさないのであれば、何らかの形でそれを求めなければなりません。

 今回のテーマは、離婚条件の履行確保です。

 離婚の際の条件につき、2通りに分類できると考えられます。

 1つは、口頭での約束や離婚協議書など、当事者のみの関与で条件が定められている場合です。この場合には、相手が約束を守らないとき、「守れ。」と申し入れる以上のことはできません。あくまで、別途法的手続きをとって、履行を確保することとなります。ただ、財産分与や慰謝料、養育費等の金銭の支払請求権についてのみは、執行受諾文言の入った公正証書を作成することで強制執行を行うことができます。

 もう1つの場合として、調停調書や審判書、和解調書、判決などで条件が定められている場合があります。この場合には、相手が約束を守らないとき、強制執行を申立てることができます。ただ、金銭的請求と異なり、子の引渡しや面会交流などの場合には、強制執行ができるのか、できるとしてどのような方法によるのかについて、少々難しい問題があります。

 また、調停や審判で定められた条件の履行については、履行勧告という方法によることもできます。履行勧告とは、調停、審判を行なった家庭裁判所から、条件を守らない相手に対して「守れ。」と働きかけてもらうことです。強制執行と違い柔らかく働きかけるため、相手の感情的反発を和らげることが期待できると考えられます。他方、強制力はないため、使いどころは選ぶ必要があるでしょう。

 その他、義務の不履行に対する損害賠償請求や、子ども絡みのことなら親権者、監護者変更の申立てを行う姿勢を示すことも、履行確保に資すると考えられます。