相手方に愛想を尽かせて離婚を求める場合、離婚を速やかに行うことができないことは多いです。他方が離婚に反対している場合は無論のこと、双方に離婚の意思自体がある場合であっても親権や金銭面での折り合いがつかず、交渉や調停、果ては訴訟までと決着まで長引くことはあります。
一方、どちらかが離婚を切り出した場合、少なくとも離婚を求める側の主観としては、往々にして夫婦関係が破たんしている解釈となるため、夫婦間の相互扶助が途絶えてしまう可能性が高くなります。端的に言って、家計にお金を入れないこととなります。
そうなると、専業主婦などお金がない側は、生活費にも事欠くこととなります。離婚をする上では、いかに早く離婚を成立させるかを考えることも大事ですが、それと同じくらい、離婚を切り出してから(あるいは別居をしてから)離婚が成立するまでの生活の糧をどう手に入れるかを知っておくことも大事です。
相手方への生活費請求とは婚費の請求ですが、今回は離婚と並行する婚費請求に触れようと思います。
婚姻費用は、黙っていても当然のごとくもらえるものではありません。相手が任意に渡してくれないなら、調停または審判で請求する必要があります。
また、調停なり審判で婚費を請求すると、大体の場合には婚費の支払いの始期は手続きを申立てた月とされます。よって、相手の任意での履行が期待できないときには、できるだけ早く調停や審判を申立てるべきということになります。申立てにもたついて数カ月を無為に経過させると、その分得られる婚費額が少なくなるので注意が必要です。
適正な婚費負担額は、双方の収入額を基に算定表に当て嵌めた額が目安となり、事案に応じた修正要素を加味して決せられることが多いです。相手の収入が多く、こちらの収入が少ないほど、金額は増加する傾向にあります。
なお、婚費調停又は審判も、それ自体の結論が出るまでには時間を要します。そのため、本当に生活に困窮する場合には、途中でお金が底をつくこともあり得ます。そのままでは干上がってしまうか、早々に金額につき合意して婚費を支払ってもらうため不利な金額で妥協せざるを得ないということになり、申立側の不利益が大きくなります。そのため、法律上は、必要性を疎明して本来の結論が出る前に婚費の仮払いを実現する仮処分の手続が制定されています(家事審判法15条の3 家事事件手続法では105条)。
家事審判法では、上記の手続は、同時に審判を申立てなければなりません。