皆さんこんにちは。

 1月17日分のブログで、婚姻成立後、夫婦間にはどのような法律関係が生じるかを紹介しました。
具体的には、①夫婦の同氏、②同居義務・協力扶助義務、③貞操義務、④夫婦間の契約取消権でしたね。
 (記事はこちら:婚姻により夫婦間に生ずる人的な法律関係について

 今回は③貞操義務についてより深く検討していきたいと思います。

 ここで今までのブログであれば、民法の条文をあげて夫婦が同氏でなければならないとか、同居義務・協力扶助義務があることを説明していました。しかし、意外にも民法の条文として、夫婦には貞操義務があることを明言した条文はないんですね。やったー、それなら浮気しても全然問題ないじゃんって思ったそこの人、甘いですよ。確かに夫婦に貞操義務があることを明言した条文はない代わりに次のような条文があります。

 民法770条1項、夫婦の一方は次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。1号、配偶者に不貞な行為があったとき。

 そうなんです、貞操義務違反行為つまり不貞行為は離婚原因として民法上定められているんです。つまり、不貞行為が離婚原因になるから、夫婦には貞操義務があるんだという論理の流れになっているんですね。世の中甘くないですね。しかも不貞行為なんかした日には相手から損害賠償されたりしますから、やはり浮気は許されませんね。

 このような貞操義務ですが、戦前の旧民法では男女間に差がありました。具体的には、男性の不貞には寛容である一方、妻の姦通は、姦通罪として刑罰の対象とまでなっていたんですね。びっくりですね。

 貞操義務の根底にはキリスト教的な考えがありますが、キリスト教が広く浸透している国々でも男女間で貞操義務に差があり、それが平等になっていったのは最近のことと言われています。

 このように見てくると貞操義務は、現代では当然のように認識されていますが、男女間に平等に貞操義務があるという考え方は実は新しい考え方であることがわかります。これから社会全体が大きく変わりますし、世の中の家族の在り方、夫婦の在り方も大きく変わっていくでしょう。その中で貞操義務の具体的な内容は夫婦間でどのようにあるべきかを少し考えてみることは将来の社会の在り方を考えることに繋がるのではないかとも思います。

 それでは、また。

参考文献(「民法親族・相続」(第2版)松川正毅)

弁護士 福永聡