皆さま、こんにちは。

 当ブログでも以前取りあげられているように、離婚に伴う財産分与は、清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与という3つの性格を持つといわれています。

 今回は、このうちの扶養的財産分与についてもう少し詳しくみてみたいと思います。

 婚姻によりそれまでの仕事を辞めて一定期間が経過しているような場合、離婚後すぐに自立した生活を営める収入が得られる就職先を探せないこともあると思います。その場合、特有財産があればよいですが、そうでないと、離婚すると、ただちに生活に困窮してしまう場合も生じ得ます。他方で、離婚後の収入や特有財産は、そもそも財産分与の対象とならないため、離婚後も稼働している相手方は婚姻時よりも経済的に余裕が生じることがあります。

 このような場合に、稼働等している相手方に対し、離婚後、申立人が経済的に自立できるまでの間の生活費を財産分与として負担させるべきだというのが「扶養的財産分与」の考え方です。

 このように扶養的財産分与は、離婚後の扶養としての性格をもつ財産分与で、清算的財産分与や慰謝料的財産分与だけでは、離婚後の配偶者の保護が十分でない場合に認められることがあるものです。

 したがって、扶養的財産分与は補充的に命じられるものと裁判実務上は考えられており、財産分与請求者に要扶養性があることが必要となります。

 清算的財産分与、慰謝料的財産分与により相当の財産分与を受ける場合や配偶者に相当の資産、収入がある場合には、扶養的財産分与は認められないことになります。

 具体的な算定においては、裁判時を基準として、その時点の特有財産を含めた双方の資産、負債、双方の稼働能力を比較し、申立人の扶養の必要性と相手方の扶養能力を検討することになりますが、実務においては離婚した夫婦に明らかな経済的格差がある場合に扶養的財産分与を認めることが多いようです。

 上記のような考え方から、扶養的財産分与の額は、離婚後、ただちに稼働して自立した生活をできない配偶者が、離婚後において自立できるまでの間の生活費相当額ということになります。

 たとえば、長い間主婦であって再就職して自活するまでにある程度の期間が必要だという場合では、1年から3年程度の必要最低生活費を考慮して算定されることが多いようです。

 支払の方法としては、一括払いによる場合と定期給付金による場合がみられますが、基本的には一括払いとし、相手方に資産が乏しく、一括払いが無理な場合では、定期金払いとされることが多いと思われます。

弁護士 髙井健一