先々週に浮気の慰謝料請求についてお話ししました。浮気は、妻が夫に対して貞操義務(配偶者以外の人と性的関係を持たない義務)を守るよう求める権利を違法に侵害するものなので、不法行為が成立することになり、慰謝料を請求することができる、ということでしたね。
今日も浮気の慰謝料請求にからんだお話です。
浮気は普通、ある程度の期間にわたって続くものですよね。だから、夫や浮気相手はその期間中ずっと、貞操義務違反、つまり、妻の権利を侵害し続けていることになります。
妻の権利を侵害し続けているんだから、浮気が長く続けば続くほど、権利侵害の度合いは強まって、浮気の期間に比例して慰謝料額も増えて行く…ということになるような気がします。
でもここで、「時効」という問題があります。
不法行為に基づく損害賠償請求権は、一般的に、不法行為による「損害及び加害者を知った時」から3年間で時効によって消滅する、つまり、不法行為に基づく損害と加害者を知ってから3年間しか不法行為に基づく損害賠償請求をすることはできないとされています(民法724条)。
そうすると、夫(加害者)が浮気していること(→妻の権利侵害→損害)とその浮気相手(加害者)を知ったら、知ってから3年以内に慰謝料請求しないと、それ以後は慰謝料請求することはできないということになりそうですね。
では、浮気が10年とか20年とかの長い間続く場合、どうなるのでしょう。このような場合、観念的には、日々「損害及び加害者を知った時」が繰り返されている状態になるので、浮気とその相手を知ったら、直近3年間分しか慰謝料請求できないのでしょうか。浮気が原因で離婚することになったのなら、離婚するまでの10年、20年分の全てをまとめて慰謝してほしいと思いませんか。
判例は、21年間浮気が続いていた事案で、直近3年より前に浮気とその相手を知っていたのであれば、直近3年より前(浮気1年目~18年目)の浮気についての慰謝料請求権は時効により消滅しており、直近3年分(浮気19年目~21年目)しか慰謝料請求できないとしました(最判平成6年1月20日)。
つまり、浮気とその相手を知ってから3年以内に慰謝料請求したら、それまでの浮気の慰謝料全てを請求できるけれど、知ってから3年経過した後は、知る前の浮気分の慰謝料は請求できず、直近3年分の慰謝料しか請求できないということです。21年も苦しんだのに3年分だけ…なんだか空しくないですか。
こんなことにならないように、慰謝料請求するなら浮気への怒りが熱いうちに、早めにしたほうがいいかもしれませんね。