1 はじめに

 今回は、離婚に伴い財産分与を行うにあたり、分与対象財産の評価をどのように行うかについてお話しいたします。

2 分与対象財産の確定

 分与対象財産は、原則として別居時の夫婦共有財産とされています。なぜなら、夫婦が協力して形成した財産を清算するわけですから、夫婦の協力関係が失われた別居の時をもって、分与対象財産を決めるのが合理的と考えられるからです。

 したがって、別居時に分与対象財産にあたるものがどのようなものかをできる限り明確に記録して(できれば、その時期にあったことを写真で撮影しておくことが望ましいでしょう。)、財産分与の話し合いをする時に、記録したものをもとに話し合いを行えば、もれのない分配が行えます。

3 分与対象財産の評価

⑴ 預貯金

 預貯金については、別居時の残高によります。通帳等を所持している当事者が、残高証明や通帳の写し等を提出することになります。しかし、調停では、お互い預貯金がいくらあるかの資料を出し渋ることが多く、なかなか正確な資料がそろうということはないというのが実情です。訴訟の場合には、どの金融機関に預貯金があるかがある程度判明していれば、調査嘱託という方法により、裁判所を通して金融機関に資料を出してもらうことができます。

⑵ 不動産

 不動産の場合、不動産鑑定士による鑑定が正確な評価になるとも思われますが、鑑定にかかる費用が高額になることから、あまり鑑定まで行うということはありません。通常は、近隣の不動産業者に、当該物件であればおおよそどれくらいの価格で取引されるかの評価をしてもらい、査定書を作成してもらうことが多いです。

 別居後に不動産を売却した場合は、その売却額が不動産の評価額となります。

⑶ 生命保険や学資保険等

 生命保険や学資保険の場合は、別居時の解約返戻金相当額をもって評価します。学資保険は、子の教育費に充てるということで、分与対象財産としない場合もあります。

4 最後に

以上のように、財産分与を厳密に行う場合は、上記の評価が必要となりますが、調停での話し合いで財産分与の内容を決める場合は、財産ごとでどちらに帰属するかを、柔軟に決める場合が多いです。