9月に入り、そろそろ夏の疲れが出てくる頃ですがお元気でお過ごしでしょうか?さて、前回は、離婚後の生活設計について検討しましたが、今回は、離婚した場合と、離婚しないうちに夫が亡くなった場合の年金受給について考えてみたいと思います。

Q15: 夫が亡くなると遺族厚生年金がもらえるのですが、離婚して年金分割してもらうのと、離婚しないで遺族厚生年金をもらうのとではどちらがよいでしょうか?

A15-1: 遺族厚生年金とは
 遺族厚生年金は、厚生年金保険に加入している人が在職中に亡くなった時、厚生年金の加入を止めた後、厚生年金加入中に初診日のある病気や怪我で初診日から5年以内に亡くなった時、1級又は2級の障害厚生年金受給者が亡くなった時、ないし、老齢厚生年金の受給者又は受給資格期間を満たしている人が亡くなった時に遺族に支給されます。各共済組合の場合も同様の要件となります。

A15-2: 離婚時年金分割と遺族厚生年金
 離婚時年金分割は、離婚しないともらえませんが、遺族厚生年金は、離婚するともらえないので、経済的な意味で離婚したほうがよいのか、夫婦でいた方が良いのかが問題となります。

A15-3: 支給開始時期
離婚時年金分割の場合、原則として妻自身が65歳以上にならないと支給を受けられません(繰上げ受給で60歳から支給が受けられる場合があります)。

 これに対して、遺族厚生年金の場合、妻自身の年金受給開始時期とは関係なく、夫が死亡した時支給されます。

A15-4: 支給額
 離婚時年金分割の場合、支給される額は、最大で分割の対象となる厚生年金の2分の1ですが、遺族厚生年金の場合、夫の受け取る老齢厚生年金の4分の3です。

 遺族厚生年金は、老齢基礎年金と併給されます。ですので、妻が65歳以上になると、妻は、離婚していれば年金分割と老齢基礎年金を、離婚していなければ遺族厚生年金と老齢基礎年金を受け取ることになります。

A15-5: どうしても離婚したいと考えている方にとっては、どちらが良いかという問題ではないかもしれませんが、経済的に自立できなければ生活を維持できませんから、事前の準備が大切です。

 年金については、受給要件等複雑ですので、最寄りの年金事務所の相談窓口等で相談をされると良いでしょう。

弁護士 石黒麻利子