まれに、「夫とある男性の仲がどうも怪しいんです。」とか、「うちの妻が女性と付き合っているようなのですが・・・。」などという相談があるようです。
いろいろと調べてみたのですが、同性愛がらみの離婚判例は少なく、私は3件しか見つけられませんでした。ただ、以下のようなことは注意しておくべきでしょう。
① 単に配偶者が同性愛者であるというだけでは離婚事由にならない
→少ない判例を読んでみると、配偶者が同性愛者であるという点を離婚事由として検討しているわけではなく、配偶者が同性愛者であることで夫婦間にどのような問題が生じたか(セックスレスや配偶者の同性との肉体関係など)という点について検討しています。
② 配偶者の同性との性交渉は、民法770条1項1号の「不貞な行為」ではなく、5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる
→「不貞な行為」とは婚姻外の異性間での性的交渉を指しているから、同性との性交渉はこれにあたらない、という解釈のようです。
③ 配偶者の同性との性交渉については、立証が困難である
→本稿ではこれについて取り上げます。
夫の部屋から男性ヌードが写っている怪しい写真集がでてきた、というのではダメなのは当然ですが(①の観点からも離婚事由にはあたらないでしょう)、男性同士・女性同士で夜中密室に出入りしているところを写真に撮った、というのでもダメだと思われます。
たしかに、これが男女二人で夜中密室に出入りしていた、というのであれば、「不貞」の証拠となりえます。しかし、同性二人が夜密室に出入りしていたとしても、そこで性交渉があったと認定できないことは、常識から考えても当然でしょう。普通のホテルではなく、それがラブホテルだったとすると多少は証拠価値が高いのかなあとは思いますが(もっとも、ラブホテルの場合、諸般の事情から同性、特に男性同士の利用を断るホテルが多い・・・と聞きます)。
男女間でよく不貞ないし婚姻を継続し難い事由の証拠として提出されるのは、密室への出入りの写真以外であれば、たとえばメールのやり取りであるとか、ラブレターの類、異常に回数が多く時間も長い(それも深夜であったりする)電話の通話記録などですが、同性間の場合はそれもなかなか難しいように思われます。電話については、同性同士の長話なんかは通常よくあることですし(特に女性)、メールや手紙に関しても、「何か変な表現があるが、それは冗談なんだ(笑)」と言われてしまえば、裁判官も「そういう冗談もありうるのかなあ?」と思ってしまいそうです。行為そのものについて書いてある文章があればまた話は違ってくるでしょうが、単なる愛情表現では足りないようです。
となると、同性間での浮気を立証するには、当事者が認めている場合でないなら、結局ほぼ行為そのものの写真や動画しかない、という結論になりそうです。そして、この結論を裏付けるような下級審判例があります・・・これは次回紹介しましょう。
弁護士 太田香清