こんにちは、弁護士の平久です。今回は婚姻費用を算定する際にいかなる事情が考慮されるかについて考えてみたいと思います。
1.権利者の稼働能力
たとえば、夫がサラリーマンで、妻が専業主婦の夫婦で、妻はパートなどもしておらず、収入が0の場合を考えてみましょう。この場合、権利者の収入を0として婚姻費用を算定すべきでしょうか。
こうした場合、現実的には収入は0ですが、妻が働こうと思えば働ける状態であれば、働いた場合に平均して取得することができると見込まれる収入額を推計して権利者の収入とするのが公平と言えるのではないでしょうか。そこで、賃金センサスなどの統計資料を利用して収入を推計することが行われています。
ただし、子どもがまだ小さい場合や病気で働けないなど妻の就労が困難と思われるケースでは収入推計されないことがあります。このような場合にも妻は働きに出るべきだと考えるのは妻に酷ですよね。
2.義務者の稼働能力
反対に義務者である夫が調停・審判の期日に出頭しなかったり、源泉徴収票や確定申告など収入資料を提出しなかったりする場合にも、妻の場合と同様に、賃金センサスから収入推計されます。
ただ、夫の収入が賃金センサスにより推計される収入額より多額であると分かっている場合には、夫にとっては収入資料を提出せず、賃金センサスにより収入推計される方が有利ですよね。このような場合、夫、あるいはその代理人の弁護士は、探しているけれどなかなか見つからないなどと言い訳をして提出を渋る態度に出てくることが予想されます。
妻の側が、夫の給料明細や給料の振り込まれる口座の通帳のコピーなどの資料を入手していれば、それを提出することで夫の現実の収入を明らかにすることができますが、そうした資料のない場合には、裁判所を通じて税務関係当局に収入、所得などについて調査の嘱託や報告の請求をすることで、夫の現実の収入を把握することが可能となる場合があります。
ただ、自営業者のような場合でそもそも税務署にきちんと正しい所得を申告していないような場合には、夫の現実の収入を明らかにするのは難しいかもしれません。
弁護士 平久真