こんにちは。暑くなってきましたね。
 さて、本日は、財産分与の際に婚姻費用の清算をするケースについてお話します。

 財産分与には、婚姻中に夫婦二人で形成した財産の清算という趣旨があります。財産分与のこのような側面を、清算的財産分与と言います。

 清算的財産分与の一つとして、婚姻費用の未払い分を清算する趣旨で財産分与をする場合があります。婚姻費用を支払うべき配偶者(「義務者」といいます。)が、婚姻費用を支払わないまま離婚に至った場合、義務者は婚姻費用を支払わなかった分、自分の財産を自由に使ったり貯めたりすることができ、自分の財産を増加させることができたと言えますよね。そこで、婚姻費用を支払わずに形成した財産は、本来、他方の配偶者(以下、「権利者」といいます。)に与えるべきものだから、離婚時に、清算的財産分与として、他方配偶者に与えることにするのです。

 では、逆に、婚姻費用を支払いすぎた場合にはどうなるのでしょうか。先ほどのケースの逆なので、これも財産分与として清算すべきとも考えられそうです。

 しかし、そのようなケースにおいて、裁判所は、夫婦関係が円満に推移している間に一方が過当に負担する婚姻費用は、その清算を要する旨の夫婦間の合意等の特段の事情のない限り、いわば贈与の趣旨でなされ清算を要せず、破綻後の過当な負担については財産分与で清算を求めることができる、としました(高松高判平成9年3月27日)。

 この判決の特徴は、「夫婦関係が円満に推移している間」には、特段の事情のない限り、清算を要しないとした点です。

 たしかに、通常、円満な夫婦間においては、義務者は気前よく、生活費でも学費でもなんでも出してくれるでしょう。権利者も義務者を信じて、出してくれるものは使ってしまうでしょう。もしも、離婚時に清算が必要となったら、権利者としては大打撃です。

 これに対し、破綻後に過当に負担した婚姻費用は、清算を求めることができます。前述の判決では、破綻後に権利者が義務者からもらったのは二人の子どもの学費のみということでしたので、過当な婚姻費用の負担ではないという判断がされ、その点については、清算的財産分与はなされませんでした。