認知調停と訴え
婚姻関係にない男女の間に生まれた子は、その女性の子であることは分娩の事実から明らかでも、離婚後300日以内に生まれた等の事情がない限り(民法772条2項)、その男性の子であるとは当然にはいえません。
それには、その男性がその子を認知するという法律行為が必要となります(民法779条)。そして、その男性が認知してくれない場合、強制的に認知させる法的手続が必要となります(民法787条)。
なお、既に他の男性がその子を認知しているものの、真実の父が後で判明したといった場合、上記他の男性との父子関係を親子関係不存在確認訴訟等により、法的に否定した後でなければ、認知請求できないとされています(東京地判平成13年2月20日)。
また、認知に関しては、特殊調停事件に分類されます。このため、認知訴訟を起こす前に、認知調停を申し立てなければなりません(家事審判法18条1項)。そして、特殊調停事件とは、私人による自由処分が許されない事項を決める事件であり、それ故、対象事項に関し、当事者間の合意が成立しても、調停を成立させることはできません。裁判所は、必要な事実調査をした上、調停委員の意見を聞いて、合意に相当する審判をすることになります(家事審判法23条1項)。調停申立には、子の戸籍謄本及び相手方の戸籍謄本が必要となりますが、相手方の本籍地がわからなくとも、相手方の住所がわかっていれば、本籍地入りの住民票を役場に採りに行けば足ります。
次の認知訴訟手続においては、多くの場合、DNA鑑定が行われます。ただ、被告がDNA鑑定に応じなければ、鑑定協力拒否の態度のみをもって、父であることを擬制するというわけにはいきません。そこで、その場合、原告は、
1)子の母と被告との間に性交渉があったこと
2)子の母が他の男と性交渉がなかったこと
を立証することが求められます。
1)については、比較的立証が容易かもしれません。ただ、ここが立証できなければ、2)を検討するまでもなく、原告敗訴となってしまいます。したがって、強制的に認知させる手続に入る段階で、まずは子の母とその男性との性交渉の存在について、何らかの証拠を押さえておくことが必須となるわけです。
2)は、子と男性の血液型、指紋、顔つき等の整合・不整合の他、その男性が父であることを前提にした言動をとっていたかなどから立証していきます。
認知の訴えに勝訴すれば、20万円~40万円の鑑定費用や交通費等の訴訟費用は、全て被告負担とすることができます。ただ、実際には、鑑定費用などは予納しなければならず、その割合は父子折半とされることが多いため、後で被告から半額分を回収する必要があるのです。