初めまして、今日から水曜日のブログ担当になった太田と申します。

 さて、協議離婚の際に元夫と養育費の取り決めをしたはいいが、そのような合意書もなく、のちに支払われなくなった場合はどうしたらいいでしょう。

 このような場合は、養育費請求調停の申立てをするしかありません。調停調書ができれば強制執行も可能になります。

 ただ、正直なところ、元夫の給料が下がった場合には、離婚時に約束した養育費よりも低額になる可能性は大きいと思われます。基本的に現時点の元夫の収入を前提として算定表を見ることになるのが第一の理由。そして、第二に・・・男性は関西弁でいうところの「ええかっこしい」のところがあって、ついつい多めの養育費を支払う約束をしてしまい、後から払えなくなることが多いのです(笑)。皆さんよく、「●万円って約束したのに、きっちり●万円は払ってもらえないんですか!?」と憤慨されますが、無い袖は振れないわけでそこは御理解ください。

 では、元夫が全くの無職・無収入になった場合はどうしたらいいでしょうか。無い袖は振れないので、養育費もゼロ円になってしまうのでしょうか?

 これは実際に私が担当した事例で、なんと、調停中に元夫が勤務態度の悪さからクビになってしまったのです。「クビになったので、養育費は払えない。」とのこと。しかし、その元夫は女性と同棲しており、言葉は悪いですがまるでヒモのような生活をしているらしいのです。一方、依頼者の方は懸命に働いて女手一つでお子さんを育てています。こんなバカな話があるでしょうか?

 私は気が付いたら、「審判いきましょ、し・ん・ぱ・ん!」と叫んでいました。「先生、大丈夫ですか?」と依頼者に不安げな顔をされてしまいましたが、「大丈夫、真面目な人間が馬鹿をみるようなことを裁判所が許すはずがない!」と答えました。

 去年の9月7日のブログに岡本弁護士が引用していますが、大阪高裁平成6年4月19日決定のことが頭にあったのです。この決定は、①養育費の法的性質は子に対する生活扶助義務ではなく、生活保持義務であり、②生活保持義務とは、親は子に対して自己と同程度の生活を常にさせるべきものである、との判断を高裁が示したとの点で注目されます。しかし、例の「一椀の飯も分かち合う」とのフレーズ以外にも注目すべき点があるのですよ。

 「(中略)いまだ僅々30歳を超えたばかりの若年である相手方が、右の間、全く無職・無収入の状況のままその日常を推移していたものかどうかは甚だ疑問であるとしなければならない。」

 ほぼそのまま意見書に書いてやりました(笑)。他にもこの決定は、「相手方の新たな就職先を探す努力の程度内容、状況如何によっては、相手方の潜在的労働能力を前提にして、本件養育費を算定することの可否及び当否をも検討すべき」としています。それで、私は、確か、元夫が真面目に就職先を探そうとしていないこととあわせて、元夫がクビになる前の収入と賃金センサスの両方で養育費を計算して主張したように思います。結果、審判では多くはないながらもそれなりの養育費が認められました。

 ですから、元夫が失業したからといって養育費を諦めてはいけません。きっちり審判で養育費を認めてもらって、元夫が将来就職したときに給料を差押えてやれば良いのです。

 もっとも、「元夫がどこに就職したのか分からない~!」というのでは差押えできません。あなたの持てる情報網を駆使して、元夫がどこに就職したのかを調べてくださいね。

弁護士 太田香清