離婚事件で養育費や婚姻費用が問題となった場合、実務では算定表を基に費用を算出することが一般的です。

 この算定表は、離婚関係の書籍等に掲載されているのはもちろん、インターネットでも簡単に調べられますので、ご依頼者様の中には、予め自分のケースでは算定表ベースではいくらぐらいになるかということをご自分で調べてから来所される方もいらっしゃいます。

 ただし、この算定表は、

① 義務者、権利者の基礎収入の認定
② 義務者、権利者、子の最低生活費の認定
③ 義務者、権利者の分担能力の有無の認定
④ 子に充てられるべき生活費の認定
⑤ 義務者の負担分の認定

という従来家庭裁判所で用いられていた算定のプロセスはそのままに、標準的ないくつかのケースを想定した上で、それぞれの認定で用いられる数値を、個々のケースにおける実額ではなく統計的な標準的な数値に置き換えて、権利者、義務者の総収入さえわかれば簡易迅速に養育費、婚姻費用を算定できるようにしたものです。ということは、最初に想定されている標準的なケースでない場合には、算定表の修正が必要になってきます。

 以前、当ブログでは、収入額が算定表の上限を超えている場合や、子供が4人以上いる場合等、標準的なケースではない場合についてどのように考えるべきかについて説明してきましたが、今回も、算定表の修正が必要なケースとして、義務者(または権利者に)給与所得と事業所得がある場合について、どのように計算するかを説明したいと思います。

 例えば、サラリーマンの夫であっても、同時に事業所得があって確定申告しているような場合はどう考えるべきでしょうか。

 算定表の縦軸、横軸の年収は、「給与」と「自営」の二種類があり、同じ年収でも、給与所得者か自営業者かでかなり異なる養育費、婚姻費用が導き出されることになります。このように、給与所得者か自営業者かによって区別されているのは、給与所得者と自営業者とでは、総収入から基礎収入を認定する際に控除すべきものがそれぞれ違うので、総収入に占める基礎収入の割合が自営業者の方が高くなっているからです。

 では、両方の収入がある場合、どのようにして算定表を修正すればよいのでしょうか。

 このような場合は、給与所得額と事業所得額のいずれか一方を他方に換算し、合算した額について算定表を利用することが考えられます。

 例えば、義務者の収入が給与所得1000万円事業所得500万円である場合、算定表を見ると、事業所得500万円はだいたい給与所得700万円と換算できるので、給与所得が1700万あるものとして算定表を適用すればいいことになります。もちろん、逆に給与所得を事業所得に換算してもほぼ同じ結論になります。

 両方の収入のある方で、養育費や婚姻費用がいくらになるかご興味のある方は、この方法で算定してみて下さい。

弁護士 堀真知子