こんにちは。
 今日は、同棲男女関係における財産分与についてお話します。

 私がなぜ、このテーマで話をするかというと、女友達と話している時に、たまに「同棲のままと結婚するのとどっちが得か。」というような話になることがあるからです。「得」というのは、もちろん、金銭的な側面でのことです。

 結婚すれば、たいていの人が知っているように、離婚の際、夫から妻に対して財産分与や、場合によっては慰謝料が支払われます。

 内縁であっても、財産分与や慰謝料が認められることがありますが、まず、「内縁」と言えるかどうかが一つのハードルとなります。「内縁」は、法律上の婚姻関係はないものの、当事者間に婚姻意思があり、事実上の夫婦共同生活がある関係のことを言います。婚姻意思がないか、事実上の夫婦共同生活がないような場合、単なる同棲であって、内縁関係が認められない可能性があります。

 ここで、次のような事例を紹介します。

【事例】
 1970年、X女は、Y男と同棲するようになった。Yは、同年11月、洋酒喫茶を教える教室を開設し、1972年、喫茶軽食店を開店した。6年後には、さらに1軒喫茶店を開いた。Yは教室経営、Xは喫茶店の経営と銀行取引関係を行っていた。XとYは、順調に蓄財したが、Yの女性関係が原因で、1977年2月ころ、Xは他の男性Aと駆け落ちしてAと同棲するようになった。
 XからYに対し、財産分与を申し立てた。

岐阜家裁昭和57年9月14日審判 判旨

 XとYの同棲は、婚姻届も、その他の対外的公示行為も全くなく、正にYの述べるとおりずるずるべったりの性関係に入り同棲生活を続けて行ったものである。XがYに入籍を要求したが、Yに拒否され、Yは他の女性と継続的な性関係を持っていた。

 しかし、同棲生活は7年近くにも及び、その間、YはXを店の賃借の保証人としたり、店の売上金管理や銀行取引をさせたりしていたものであって、Xを単なる野合の相手として扱っていたのではなく事実上の妻として遇していた。

 したがって、両者の関係は、内縁と判断される。

 ただ、内縁関係の解消の原因は、XがAと駆け落ちしたことにあるから、慰謝料的財産分与や離婚後扶養的財産分与は認められないとして、清算的財産分与のみを認める。

 そして、教室や店の経営が発展したのは、主にYの個人的技能と才覚によるところが大きく、Xの協力は内縁の妻という範囲内にとどまることなどに鑑み、Xへの分与割合は、4分の1とする。

 この事例からすると、仮に「ずるずるべったり」と性関係に入ったとしても、事実上、妻として扱っているような事情(稼業の教室や店の財産管理を任せていた等)があれば、内縁関係ありとして財産分与が認められうるということになります。ただ、通常の婚姻夫婦間における財産分与割合は2分の1ですが、内縁の場合は具体的事情を考慮して分与割合が決められるようです。

 冒頭に話した「同棲のままと結婚するのとどっちが得か。」と言う問題については、「単なる同棲のままでは財産的に得することはほとんどなく(家賃などが浮くかもしれませんが)、婚姻意思をもって同棲相手の財産形成に寄与するくらい同棲相手を支えていれば、財産分与の可能性は出てきて、結婚した場合に近いお得さになることもある。」ということになるでしょう。