ある一定の要件を満たせば、不貞をした配偶者などの有責配偶者からの離婚請求も認められることは、このブログでも何度か紹介したとおりです。では、有責配偶者が財産分与義務者であった場合、離婚請求とともに財産分与の申立てもすることができるのでしょうか?

 たとえば、不貞をした夫から妻に対して離婚請求をして、この離婚請求で妻との関係をすべて終わらすために、夫から財産分与を申し立てるような場合です。

 裁判例でも、財産分与義務者からの財産分与の申立てを認める立場と認めない立場がともにあるようです。

 認める立場の裁判例の根拠は以下の2点にあります。

① 人事訴訟法15条1項に定める離婚請求に付帯してする財産分与の申立ては、裁判所の形成権限の発動を求める発動を求めるにすぎず、私法上の形成権ないし具体的な権利主張を意味するものでなく、財産分与義務者から財産分与の申立てを認めても、財産分与を請求する側において何ら支障がないこと

② 財産分与についての協議が不調・不能な場合には、財産分与義務者の中にも早く協議を成立させて婚姻関係を清算したいと考える者もいること

 一方、認めない立場の裁判例の根拠は以下の3点にあります。

① 人事訴訟法15条1項に定める離婚請求に付帯してする財産分与の申立ては、財産分与請求権の具体的内容の形成を求めるものであるから、財産分与を請求する者を申立権者と解するのが相当であること

② 有責配偶者の離婚請求の拒否と離婚が成立した場合の財産分与とは別個の問題であること

③ 手方配偶者がもっぱら離婚請求の当否のみ争っている場合には、分与の対象となる財産の内容、総額や財産の形成・維持に対する当事者の貢献の内容について、相手方配偶者からの積極的な主張、立証を期待することはできないこと。

 個人的には、有責配偶者からの離婚請求を認めているのであるから、財産分与義務者からの財産分与請求を認めた方が一回的に解決でき、財産分与義務者からの財産分与請求は認めてもいいのではないかと思います。

弁護士 竹若暢彦