夫婦喧嘩の最中に離婚届を突きつけられ、ついその場では署名してしまったけれど、後から冷静になって考えればやはり離婚したくない・・・と思っていたら、相手からその離婚届を出されてしまった、という場合、離婚は有効になるのでしょうか。
協議離婚の要件は、離婚の意思と婚の届け出の二つです。
ここでいう離婚の意思とは、「離婚そのものをする意思」ではなく、「離婚の届け出をして、法律上の婚姻関係を解消する意思」を意味しています。したがって、借金の取り立てから奥さんを守るために実質は離婚する意思はないけれど離婚届に署名したという場合でも、離婚は有効です。
また、離婚の意思は届出時に存在していることが必要です。離婚届に署名するときに離婚の意思があったとしても、その後気が変わって届出時には離婚意思をなくしていたような場合には、離婚は無効となります。
離婚の翻意ということについては、次のような事例があります。
この事例では、夫が、妻から「もう結婚生活を続けていくことは無理です。お金も何もいらないから、判を押して。」と言って渡された離婚届に、「何もいらないのなら署名する。」と言って署名捺印して妻に渡した後で、夫が知人の市職員に妻から離婚届が出されたら止めるように依頼したこと、実際に妻がその離婚届を出したのは夫の署名後6カ月を経過した後であったこと、妻自身も、離婚届を出すにあたって、夫が反対することを予測し夫に全く知らせずに離婚届を出したことから、離婚届の作成時点においては離婚意思があったものの、その後、夫の翻意により離婚届の時点では夫に離婚意思があったものとは認められないと判断し、離婚を無効としました(大阪高判平6.3.31)。
離婚のような人生の一大事についての決断はくれぐれも慎重に、間違っても売り言葉に買い言葉のようなやりとりで離婚届に署名をしないことが一番ですが、万が一、離婚を翻意して、相手方が持っている離婚届が出されて受理されることを防ぎたいという場合には、離婚届の不受理申出という制度を利用することができます。この制度については、2010年11月04日の当ブログをご一読ください。
(記事はこちら:専業主婦の財産分与割合)
弁護士 堀真知子