3 養育費一括払いの問題点

  とはいえ、養育費の一括払いにはいくつかの問題があります。

将来の事情変更の可能性

 例えば、子が私立学校に進学するとか、重篤な疾病に罹患するとか、合意の当時予見できなかった事情が生じた場合、後から養育費の追加(増額)を請求する可能性が生じます。

 これは通常の月払いの養育費の場合でも同様ですが、一括払いの場合には、「養育費を一括で受け取り、その使途等は監護親(権利者)側で判断することとすることを前提に、義務者が一括払いに応じた」との事情が認定されるケースがあり得ます。こうなると、追加請求が認められるハードルが上がってしまう可能性があります。

贈与税のリスク

 養育費については、必要に応じて都度支払われたものについては非課税となりますが、将来の養育費を一括して支払う場合は、贈与税の課税対象となる可能性があるというのが国税庁の見解です(相続税基本通達21の3‐5)。

中間利息の問題

 「中間利息」とは聞きなれない言葉だと思いますが、わが国では、将来受け取るべき金銭を今受け取ることにはそれ自体価値があり、その分を控除して支払うべきとされています。現行民法上は、金銭は年利5%の利息を生むものと考えられていることから、本来受け取るべき時点から5%の運用益を逆算して現在まで引いて、その額を支払えばよいとされているのです。この考え方を養育費に適用すべきかどうかについては争いがありますが、審判例の中にはこの考え方を採用したものがあります。

 仮に上の例にこの考え方を当てはめると、受け取ることができる10年分の養育費の総額は約370万円と計算できます。

養育費の一括払いで不安がある方はご相談ください

 以上のとおり、養育費の一括払いはそれ自体不可能とは言えない一方、多くの問題点もはらんでいます。このようなご希望をお持ちの方、あるいは、離婚協議等に際して相手方配偶者から養育費の一括払いを請求されている方は、弁護士法人ALG&Associatesまでご相談ください。