1 養育費の一括払いとは?

 養育費を定めたとしても、その支払い義務を負った親がしっかり養育費を支払い続けるかどうかはわかりません。少し古い統計ですが、平成23年度全国母子世帯等調査(厚生労働省)では、母が監護親となり、父が非監護親となったケースで養育費の支払いがなされている家庭は、わずか20%にとどまっているとされています。

 養育費に関する合意が公正証書化されている、あるいは調停で定められた、もしくは審判や離婚訴訟によって養育費が定められた等の事情がある場合は、非監護親の財産(給与債権等)を差し押さえることによって養育費の支払いを確保することができますが、これも場合によっては確実ではありません。

 そこで、離婚の際に、将来の養育費を一括して支払ってもらいたいとのご相談を受けることがあります。

 例えば、非監護親の年収が給与収入で550万円、監護親が同じく250万円、当事者間の子が1人で10歳のケースを想定します。この場合、現在裁判所で実務上用いられている養育費算定表によれば、月額の養育費の額は月額4万円程度となります。養育費の支払い終期を20歳と仮定すると、支払期間は10年ですから、その総額は4万円×12か月×10年=480万円と計算できます。これを、一括払いで受け取ることができないかというものです。

2 養育費の一括払いは可能か?

 養育費の支払いは月払いが原則であり、当然に一括払いを請求できるわけではありませんが、例外的に実現する場合があります。その代表が当事者が合意する場合です。また、将来、養育費の定期的な給付が維持される蓋然性が乏しいと判断される等の特段の事情がある場合には、一括払いの請求が認められるとした審判例もあります。

 したがって、養育費の一括払いは不可能ではないということができます。

 もっとも、非監護親、つまり養育費の義務者に相応の財産がない場合には、一括払いについての期待可能性がないことはいうまでもありません。