加算される税法上の控除費目がある

 確定申告書は、「収入金額等」(いわゆる売上げ)から、経費等を差し引き「所得金額」を算出し、そこからさらに「所得から差し引かれる金額」(税法上考慮される各種の費目)が控除され、課税所得額が算出されます。
 そのため、養育費・婚姻費用算定の基礎となる総収入を認定する上では、確定申告書控除費目のうち、実際には支出されていないもの、算定表で標準額が既に考慮されているもの、養育費・婚姻費用の支払いに優先しないものを課税所得額に加算する必要があります。

① 実際には支出されていないもの

「雑損控除」、「寡婦(夫)控除」、「勤労学生、障害者控除」、「配偶者(特別)控除」、「扶養控除」、「基礎控除」、「青色申告特別控除額」、現実に支払いがない場合の「専従者給与(控除)額の合計額」

 これらについては、現実に支払われていないものであるから、養育費・婚姻費用算定の基礎に含める必要があります。

②算定表で標準額が既に考慮されているもの

「医療費控除」、「生命保険料控除」、「地震保険料控除」

 裁判所の考え方では、養育費・婚姻費用を算定するにあたって、総収入から、必ず支出する費用(公租公課(税金、社会保険料等)、職業費(被服費、交通費等就労のために必要な出費)、特別経費(住居関係費、保健医療費等))の標準額を控除することになります。そのため、「医療費控除」等を反映した課税所得額を基礎とすると、二重で医療費等を控除することになるため、「医療費控除」等を加算する必要があります。
 ただし、医療費等について標準額を超える支出がある場合、別途考慮する必要がある場合もあります。

③養育費・婚姻費用の支払いに優先しないもの

「小規模企業共済等掛金控除」、「寄付金控除」

 これらについては、実際に支出があっても養育費・婚姻費用に優先させるべきではないとの判断から、養育費・婚姻費用算定の基礎に含められます。