払いすぎたからと言って取り戻せるとは限らない

 結論から言うと取り戻せる可能性はありますが、常に取り戻せるわけではありません。
 そもそも、婚姻費用には上記のとおり一定の基準が存在します(「養育費・婚姻費用算定表」といわれるものです)。この算定表は、当事者の収入、子どもの人数・年齢によって決められていますが、婚姻費用は、これらの要素だけではなく、様々な事情を考慮した上で決められます(民法760条参照)。つまり、算定表の基準はあくまで一つの基準に過ぎず、これのみに拘束される必要はないわけです。
 そして、当事者が算定表よりも高い金額の婚姻費用の合意をした場合、様々な事情を考慮した上で金額を決めたと考えられます。それにも関わらず、算定表より金額が高いというだけで過払い部分を取り戻せるとすると、当事者の意思を蔑ろにすることになりかねません。
 そのため、多少、婚姻費用を払い過ぎたからといって、払い過ぎた分を取り戻すことはできないのです。

どういう場合に取り戻せる?

 では、どういった場合に取り戻せるでしょうか。
 これについては、「当事者双方の収入や生活状況にかんがみて、著しく相当性を欠くような場合」に取り戻すことができるといわれています(大阪高決平成21年9月4日家月62巻10号54頁参照)。
 具体的にどういった場合に「著しく相当性を欠く」といえるのかは、ケースバイケースであり、個々の事情で慎重に判断する必要があります。

どうやって取り戻す?

 著しく払い過ぎた婚姻費用はどうやって取り戻したらよいのでしょうか。これについて、払い過ぎたといっても、夫婦には協力し合う義務があるため、払い過ぎた部分についても不当に得た金員とは言い難いと思われます。
 そこで、財産分与の前渡しと考えて、財産分与において調整するという形で取り戻すことになるかと思います。

終わりに

 最後に、婚姻費用を払い過ぎてしまうケースは、当事者同士での話し合いで婚姻費用を決める場合が多いと思います。算定表があるため、当事者間で婚姻費用等を決めることもあるかと思いますが、上記のように算定表より高い婚姻費用の合意をすると簡単には取り戻せず、過剰な負担を負いかねません。
 婚姻費用・養育費の合意に当たっても一度専門家のアドバイスを得ることが良いと思います。